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GM管J304βγ こりゃカウントするわの製作
1.背景
「電池ボックス電子工作(その19) 高エネルギー電磁波検出器」で検出器を製作しましたが、間違いないと確証できるカウントが確認できていませんでした。 そうしたなかでP板.com(株式会社インフロー)のメールマガジンで「J304ガイガーカウンターキット」の案内がありました。 「電池ボックス電子工作(その19) 高エネルギー電磁波検出器」でまともな検出ができないことにフラストレーションを感じていましたので、買おうか買うまいか悩む時間も短く買いの判断に走るのみです。 この案内のページを見るとGM管単体も販売しているので、キットの予備用も兼ねて、自作用にGM管J304βγも1本購入です。 しかし、「J304ガイガーカウンターキット」もGM管J304βγも決して安価ではありません。 「電池ボックス電子工作(その19) 高エネルギー電磁波検出器」のフラストレーションのために価格には目をつむり入手優先です。
「電池ボックス電子工作(その19) 高エネルギー電磁波検出器」からの一連の製作で、とても残念に思っているのが過去に秋月電子通商のキットを購入していなかった事です。 下記に手元にあった秋月電子通商「かわら版」の抜粋を添付していますが、当時はとても高価で使用することもないだろうと思い入手する事自体を検討していませんでした。
【 秋月電子通商「かわら版」抜粋 】
2.こりゃカウントするわの製作
2.1 高電圧回路検討
GM管J304βγの仕様については当該品紹介のページやインターネット上で公開されている資料を参照して頂くにして、今回の製作で最初に検討しないといけなかったのが400VDC程度の高電圧発生です。 昇圧トランスを自分で巻いてもよいのですが、数100巻きできる細いエナメル線がありません。 ここで思い出したのが「我、モスキート軍団に宣戦布告せり!!(電撃触蚊の巻)」です。 できあいのDCDCコンバータを使用することにします。 早速この現品を確認しましたが、肝心の昇圧トランスに問題がありそうなので、これをそのまま利用することができません。 止む得ないので近所のDIY店に出向いて蝿取りラケットを探すと運良くまだ販売していました。 今回入手した蝿取りラケットをばらしてDCDCコンバータ部を利用します。
【 今回入手した蝿取りラケット 】
【 蝿取りラケット DCDCコンバータ部実装状態 】
【 蝿取りラケット DCDCコンバータ基板 】
【 蝿取りラケット DCDCコンバータ回路図 】
今回は上記のDCDCコンバータを改造して利用する事にしました。 ただ、このDCDCコンバータは少し容量が大きいようで、外形寸法が大きめでした。 最終的に改造した外観及び回路図を下記に掲載します。
【 改造後DCDCコンバータ 外観 】
【 改造後DCDCコンバータ 回路図 】
基板単体で動作確認すると、3Vで1200VDC以上の電圧が出力されるようです。 さすがに出力部コンデンサCaの400Vはまずいでしょう。 このコンデンサは630V 0.1μFに置き換えることにしました。
最大出力電圧を制限するためにトランジスタと思いこんでいたTN017のGND端子と電源マイナス側間に低抵抗Reを追加することで最大出力電圧制限できる事を確認しました。
この抵抗Re検討時にTN017のリード線が3本とも根本から折れてしまいました。 こんな事は初めてです。 それほど根本にストレスはかけていないはずなのに。 たまたま買い置きしていたTND012がありましたので、交換すると出力電圧がほぼ同様に発生していましたので、今回はTND012に交換して対応することにしました。 もともと消費電流が0.13Aと大きかったのですが、この変更で0.19〜0,20Aとさらに効率が悪くなってしまいました。
供給電圧を変更することで最小電圧300VDC程度まで制御できる事を確認できましたので、供給電圧を制御する事でGM管J304βγの推奨動作電圧380Vdcを得ることにしました。
供給電圧として電池を使用すると電池の消耗に応じて供給電圧が変動します。 電池駆動で2.6V程度までは動作させたいため、やはり電圧制御は必要となると考え、今回は馬鹿正直に定電圧制御をすることにしました。 GM管J304βγのプラトー傾斜を考えればオーバースペックな制御ですが最小プラトー電圧とDCDCコンバータの出力波形(リップルによる最低瞬時電圧)を考慮して、今回はやりすぎる事でokとしました。
定電圧制御をするために出力電圧検出回路が必要なので約1000:1の分圧回路を追加しました。 上記回路R41,R42が分圧回路です。 この抵抗は「High Precision Resistor Set (PM/RES)」を使用しましたが、この抵抗の入手が通常難しいでようから、代替えとしてR41はRS25D 10MΩ2本(1本当たりの定格電圧300V、2本で600V)、R42はRD−2S(秋月電子通商扱いの1/2W抵抗)の18kΩや22kΩでよいでしょう。 後者の場合は分圧比が不明ですので実測による分圧比、もしくは、抵抗値測定による分圧比推定で、出力電圧調整をするようにします。
DCDCコンバータの出力波形(リップルによる最低瞬時電圧)を見るとリップルが目に付きます。 結果的にリップル低減効果は確認できていませんが、途中経過で効果確認していたインダクタンスL1などをそのまま残してしまいました。 L1は無くても構わないと考えています。
R43は検出時に数100μsの期間380V印加さますので、このようなパルス電圧に耐えられる抵抗を選定する必要があります。 今回はRD−25S 10MΩを使用しました。
2.2 こりゃカウントするわ 回路
今回製作した「こりゃカウントするわ」の回路図を下記に掲載します。
(クリックすると原寸大の回路図をダウンロードできます。)
【 「こりゃカウントするわ」 回路図 】
定電圧制御用オペアンプIC2はNJU7044Dを使用しました。 当初はLMC6484AINを検討していましたが何故か発振をし、これを押さえ込む事ができませんでした。 悔しい思いをしながらNJU7044Dに変え ると、多少無茶をしても発振なんかしませんでした。 LMC6484AINの発振原因が掴めていないのに悔いが残ります。
DCDCコンバータのみのでも消費電流が0.2Aと大きいため、DCDCコンバータと制御回路の電源をD2で分離しました。 D2はショットキーバリヤダイオードの使用 が必須です。
電源はUSBポートからの給電、もしくは、乾電池1.5V2本直列=3Vを想定しています。 乾電池ラインの最低動作電圧は、瞬時電圧変動を含めて2.6Vです。 2.6Vを下回るとDCDCコンバータ出力電圧が低下し始めます。
VR1はDCDCコンバータ出力電圧が380Vとなるように調整します。
VR2はブザー音発振周波数調整用です。 圧電ブザー素子によりブザー音が最大となる周波数が替わりますので、ブザー音量を聞きながら適切な音量となるようにVR2を調整します。
今回のカウント用パルス幅は300μsと少し幅広としました。 これは、GM管J304βγの検出パルス幅が200μs程度あるためです。
圧電ブザー素子BUZ1にジャックを追加しています。 本基板をケースに収納して動作させた際、基板上の圧電ブザー素子BUZ1の音がほとんど聞こえなくなったために、外部にブザーを追設できるようにしたものです。
パルス出力は「パルス入力機能付き いつどこGPSロガー7」用の3.3Vロジックレベル信号と、「電池ボックス電子工作(その19) 高エネルギー電磁波検出器」で紹介したパルス積算カウンタ用の1.5Vパルスの2出力としています。
L1は電流が流れますので定格電流の大きい電源用のインダクタンスを使用します。 今回は秋月電子通商のLHL13NB471K(470μH0.9A)を使用しています。
2.3 製作例
上記回路をベースに製作した実例を以下に示します。
【 基板製作例 (部品面) 】
GM管J304βγの実装に、梱包されていた紙製の梱包をそのまま利用しています。 商品説明書も中に入れたままでクッション代わりとして利用しています。
DCDCコンバータの周辺に気持ちの問題で銅板などでシールドを設けています。 これが必要かどうかは不明です。
GM管J304βγには豆電球用のE10口金ソケットを使用しています。 耐電圧不足ですが、確保のうえです。 ソケット内の耐電圧向上改造はできませんでしたので、電線だけはチューブを被せています。
動作確認時、GM管J304βγをソケットで取り外してカウントしない事を確認しています。 多分、ノイズ誤カウントはそれほどはないと期待しています。
【 基板製作例 (ハンダ面) 】
【 基板製作例 斜視図1 】
【 基板製作例 斜視図2 】
3 動作例
「こりゃカウントするわ」のパルス出力を「パルス入力機能付き いつどこGPSロガー7」 (GPSモジュールはGPS−74A(A)−058) に入力として動作させたときの事例を下記に掲載します。
【 パルス入力機能付き いつどこGPSロガー7 接続時全体外観 】
3.1 移動測定
「電池ボックス電子工作(その19) 高エネルギー電磁波検出器」で紹介したパルス積算カウンタ、外付けの圧電ブザー素子を追加し、自宅市内巡りを自転車で約100分に渡ってかけずり回りました。 この際、上記の基板は金属(ブリキ)製の菓子缶に入れて測定しました。
この結果をグーグルアースにマッピングした結果を下記に示します。
【 パルス入力機能付き いつどこGPSロガー7 使用例 全体外観 】
下記画像をクリックすると今回の実測データをkmzファイルとしてダウンロードできます。 なお、トラックポイントは1s間隔、Wayポイントは5s間隔に調整しています。
Wayポイントには測定時間(時、分、秒)とカウント数をcpmで表示しています。
この実測例のようにGM管J304βγは確実にパルスカウントしてくれています。 当然ではありますが、本来の機能を確実に働かせています。 この検出性能をみて、思わず「こりゃカウントするわ」となりました。
掲載以外のデータを含めてのカウント数は、最小8cpm、最大34cpm、平均19.9cpmでした。
3.2 定点測定
上記測定で期待どおりの測定ができているようですので、定点長時間測定にトライです。 測定に際しては各基板をケースにいれて配線を含めて、機械的な安定性を確保しました。 実際には下図のようなケースに入れて窓際に置いて4日半連続測定しました。
【 連続測定時状態 】
【 測定結果(1分間隔測定結果) 】
約6600分(4日半)連続測定して1分毎のカウント数をプロットしたのが上記結果です。 この結果でのカウント数は、最小4cpm、最大34cpm、平均17.2cpmでした。 こんなにばらついていますので、1〜2分の短時間で現在の状態を判断するのは間違った判断をするもとになります。
それでは、どの程度測定すればよいかを検討するために測定開始から累積のカウント数と時間からcpmを計算した結果を下図に示します。 この結果より、数値的な安定はない、また、長期的な変化があるようです。 あまりにも長時間の平均値化は意味が無さそうです。
【 測定結果(累積測定結果) 】
それでは、平均値17.2cpmに近い値を得るために何分間測定する必要があるかを検討してみます。 平均値[cpm]に対して累積測定結果が何%になっているかを計算した結果を下図に示します。
【 測定結果(変化率) 】
上記グラフより±10%以内の測定結果を得るためには約5分程度、±2%以内にするためには110分(約2時間)かかるようです。
GM管を使用した測定結果の数値が氾濫していますが、その数値どこまで信じていいのか、上記結果を見ながら判断しないといけない事を改めて認識させられる結果でした。
End of This Page.