title0a.gif

Memorandumの小部屋

本ページは金銭授受を伴う行為を含むAuctionや商用Web Pageからの無断リンク・無断参照を禁じます。
無断リンク・無断参照が判明した時点で然るべき処置をとらさせて頂きます。


ボタモチのあんこ?の巻

  Webサーフィンをしていると、「電子工作」の文字列がすぐに目につきます。 それがプロ向け(と理解していますが)のWebページだとさらに気になります。 ある日、文末に記載のWebページ「電子工作“超”入門」を目にしました。 公開されてから、それなりの日数が経過しているようですが、このWebページには全く気付きませんでした。 プロ向けのWebページで電子工作”超”入門には多少の違和感を持ちましたが、どのような紹介をされているのかとても気になり読み進めました。 記事の内容については、出典元をご参照願います。

  

1. 何の電子工作をするのかな?

 Webページによれば、ポータブルアンプを製作するようです。 タイトルに”ポタアン”とありましたが、勉強不足の我が身はこれが一体何なのかわかりませんでした。 正直、電子工作で饅頭(ボタモチのあんこ)をつくるの?と思ってしまいました。 その後、この単語を調べると、わが身の知識不足が原因とわかりました。 しかし、ポータブルアンプはわかりましたが、ポタアンって、何のアンプなのか、入力は何で、出力は何なのかわかりません。 連載を読み返していくと以下のような記載(原文転載)がありました。

 え? 入力源がヘッドフォンで、出力がステレオミニプラグ(ヘッドフォン)? まあ、ヘッドフォン用のアンプですから・・・・・

 回路図をみると、エミッタホロワ増幅回路で、入力は150Ωの抵抗で終端されていました。 ライン入力にも対応?

 何がなんやらわかりません。 とにかくWebページを読み進めます。

 

2.回路動作を確認しよう

 回路図から全てを読み取る能力はありませんのでLTspiceWを使って回路動作を理解することにしました。 出展元の回路図ではダーリントントランジスタ2SD1590を利用していますが、2SD1590のSpiceモデルを見つけることができませんでした。 この対応として2SD1590の等価回路を参考にしてディスクリート部品で置き換えることにしました。(なぜダーリントンを使用するのかの追及は対象外としました。) 今回は、おおまかな動作を理解するのが目的です。 よって、トランジスタの特性は気にせず、LTspiceW付属のスパイスモデル選択メニューの最上段にある2N2222を2個使ってダーリントン接続の回路を組み、2SD1590の代替えとしました。 また、負荷はヘッドフォンですが、計算では8Ωの抵抗としました。

 

【 LTspiceW用回路図 】

 

 入力信号は0.2Vppの正弦波として、各部位の波形を計算した結果を下記に示します。 なお。本ページのVppはPeak−to−Peak電圧を意味し、約0.07Vrms(=Vpp/2/√2)に相当します。 LTspaiveWの正弦波の振幅設定はVppの1/2の値を設定します。
 なお、紛らわしいVppを使用するのは、波形から電圧を読み取るのが最も簡単で誤差が少ないためです。 残念ながら、波形から正弦波振幅や実効値を再現性よく読み取る能力を持ち合わせていません。

 

【 0.2Vpp正弦波入力 】

 0V付近の赤色波形が入力電圧V(vin)、緑色波形が負荷電圧V(vl)です。 負荷(ヘッドフォン)には入力電圧より低い電圧が出力されています。 次に入力電圧を0.2Vppにしてみました。

 

【 0.4Vpp正弦波入力 】

 緑色波形:負荷電圧V(vl)の下半分が歪んでいます。 この結果より、入力信号は0.2Vpp程度でしか利用できないことを意味します。 ちなみに、8Ω抵抗の消費電力は、0.2Vppでは約0.6mW、0.4Vppでは2.5mW。 まあ、ヘッドフォンを想定しているのですから。。。。。。。

 

3.試作してみよう

 解析結果からは試作する気になりませんでした。 しかし、上記解析をする前に2SD1590を購入していましたので、これ以上何もしないと、この投資は損失になるだけです。 時間は損失となりますが、50円玉数枚を無駄にするのがくやしくて試作をしてしまいました。

 2SD1590をブレッドボードに取り付けますが、2SD1590のリード線をブレッドボードの穴に直接差し込む勇気はありませんでした。 ブレッドボードの接触子をあまり痛めない細ピンのヘッダピンに2SD1590をハンダ付けして利用しました。 これでブレッドボードへのダメージを低減できます。

 

上段のように加工して利用しました。

【 2SD1590 】

 

 負荷である8Ωのヘッドフォンがありませんでしたので、下記のスピーカを利用しました。

 

【 8Ω負荷として利用したスピーカ 】

 

 フレッドボードで回路を組む際、部品を確実に差し込めていることを目視確認や手で確認できるように部品を配置して、これらの作業を邪魔しないように配線をします。 そのため、配線はできる限りブレッドボード用の単線ワイヤーを直線的に接続するように利用します。(より線を用いた電線長の長いブレッドボード用ワイヤを、できる限り利用しない方針でブレッドボード試作をしています。) 電源ラインは使用・未使用にかかわらず、上側・下側の電源ラインを配線接続します。 この電源ラインには、電源接続端から最も離れた場所に、比較的容量の大きい電解コンデンサ(今回は470μF)を追加しています。 また、C2コンデンサはフィルムコンデンサを利用したかったのですが、出典元が積層セラミックコンデンサとなっていましたので、手持ちのセラミックコンデンサ(茶色の円形の部品)を利用しました。 オーディオ信号回路でセラミック系のコンデンサ、しかも積層タイプを利用することを理解できませんでしたが、問題となる用途ではないので、まあいいや。

 

【 試作回路1 】

 

【 試作回路2(斜めから見る) 】

 

4.試作回路を動かしてみよう

 電池の消耗が激しいと予想されましたので、電池を利用せずに定電圧電源を3.0V出力設定として利用しました。 利用したスピーカはおもちゃなので、スピーカの音ではなく、波形観測をすることにしました。 音声波形では波形変化が激しくて、この回路の特性がよくわかりません。 この回路の評価として1kHの波形で調べてみました。 当初DSO Quadで観測していましたが、分解能が悪くノイズも乗っていましたのでNR−2000を利用しました。 そのため、時間分解能を犠牲にしています。 (俗にいう、まともなオシロが欲しくなっちゃいました。)

 入力のR1(150Ω)に印加する電圧を50mV〜500mVまで50mV刻みで変化しました。 このときの入力波形を以下に示します。 DC成分をソフトで除去しています。 当方のデータ処理方法に問題があるようで、ゼロクロス点が波形によってずれが生じています。

【 入力波形 】

 

 それぞれの入力波形に応じた出力波形は下図のようになりました。 入力200mVppからマイナス側の波形歪が目につき始めました。

 

【 出力波形 】

 

 参考までに入力波形の振幅(Vpp値)と出力波形の振幅の比を計算してみました。

 

【 電圧比 】

 

 この結果からは150mVppくらいから波形歪が目立つようです。 そこで、周波数分析をしてみた結果を下図に掲載します。 なお、周波数分析はNR−2000用のソフトWAVE SHOT!2000のFFT機能を利用しました。

 

【 出力信号周波数分析結果 (入力電圧依存) 】

 この結果からも、入力信号150mVppまでしかヘッドフォンアンプとしては使えないようです。  150mVppとすると約1.4mWということになります。 この時の電源は電圧3.00Vで電流50数mAでした。 電流が50mAとすると150mWの消費電力です。

 周波数特性の基礎データも採取していますが、上記結果から周波数特性云々するのは無意味と判断して、データ採取追加は止めました。

 出典元では「ポタアン:ポータブルアンプ」をつくるとあります。 ポータブルアンプの定義は決まっていないので、ポータブルアンプと主張すればポータブルアンプなのでしょう。 しかし、プロ(相当?)のサイトで電子部品を使った工作を紹介すれば、何でも電子工作・・・・・・ 、と思われたくありません。


出典、参考 ITmedia 電子工作“超”入門(1): シンプルなポタアンを理解しながら作るための第1歩 (1/2) および、この連載記事
        http://monoist.atmarkit.co.jp/mn/articles/1410/30/news067.html


 ページ先頭に戻る     Memorandumの小部屋 へ戻る      ホームページへ戻る


End of This Page.