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電源アダプタ「いろいろボルト」
1.背景
キットや自作回路基板を複数使用して動作確認をする事がありますが、その際、異なる電源電圧を複数準備しないといけない事はあります。 現在、実験用電源としては秋月電子通商のACアダプタやトラッキング電源キットを使用した3出力電源を使用しています。 基板の動作試験の多くは電流容量0.1A程度以下であれば済みます。 しかし、電源電圧の異なる複数枚の基板を使用すると、電圧の種類が不足する事が時たまあります。 そのときのはACアダプタを家捜しです。 ただし、注意しないとリップルの大きいACアダプタや、予想外に電圧降下の大きいACアダプタがありますので、電源の質の確認がちょっと面倒です。 電流容量は0.1A程度でそれほど必要ありませんが、1台の安定化電源から複数の安定化電圧を得られる電源アダプタ「いろいろ電源電圧」を製作です。
2,電源アダプタ「いろいろボルト」の仕様検討
2.1 基本的な考え方
高い電圧の安定化電源を入力とし、低い電圧の安定化電圧を得る電源アダプタとしました。 入力のACアダプタは最低でも15Vdcとすることにしました。 また、両極性に対応するため、入力段に全波整流回路を設けることにしました。 全波整流回路は順方向電圧降下の小さいショットキーバリヤダイオードを使用します。 今回は手持ちのRK16を使用しますので全波整流回路での電圧降下は0.62×=2=1.24V発生することになります。
2.2 出力電圧、系統
出力電圧は、使用頻度の高い電圧5V、12Vの2系統を固定電圧出力として設けます。 また、これ以外に可変電圧を1系統設けて固定電圧以外にも対応できるようにします。 よって、合計で3系統出力としました。
固定出力を12Vにしましたが、実は9Vにしようかどうしようか迷いました。 実際には9Vの方が使用頻度は間違いなく高いので12Vは可変電源で対応することも考えられます。 しかし、可変電圧用ICとして手持ちであまり使用していないLM317を使用するつもりでいましたので、LM317だど入出力電位差として3V必要となります。
全波整流回路の電圧降下1.24V、電源アダプタ「いろいろボルト」の入力電圧15Vdcを考慮すると、安定化回路入力電圧は15−1.24V=13.76Vとなります。 よって、12Vの安定化回路での電圧降下は13.76−12=1.76V以下にしないといけません。 よって、LM317を使用すると、12Vの安定化回路を作ることができません。
電源アダプタ「いろいろボルト」では12V出力は必須と考えていますので12V電源は必要です。 この対応として、低飽和電圧の可変電圧IC、LT3080(いっこいっこ充放電繰り返し器で使用)を使用することで対応できますが、より安価で汎用的な低飽和電圧三端子レギュレータLM2940CT12(入出力電位差0.5V)で12Vを得る事にしました。 そして9Vは可変電源で対応する事にしました。 よって、仕様上10.76〜12Vの間は仕様範囲外ということになります。 ただし、実用上はこの範囲も問題なく使用できると思います。
2.3 出力電流
出力電流は定電圧ICの温度によってかわります。 製作例で0,1A程度ということで考えて頂ければと思います。
3.電源アダプタ「いろいろボルト」の設計、製作
電源アダプタ「いろいろボルト」の回路図を下図に示します。 3系統は下記の低電圧ICを使用しました。
系統1 汎用三端子レギュレータ7805を使用した5V出力
系統2 低飽和電圧三端子レギュレータLM2940CT12を使用した12V出力
系統3 汎用可変電圧三端子レギュレータLM317Tを使用した1.3〜10.7V可変出力
上図をクリックすると原寸大の回路図をダウンロードできます。
【 電源アダプタ「いろいろボルト」の回路図 】
全波整流回路D1〜D4は1S4など1A時0.5Vの整流用ショットキーバリヤダイオートで対応することもできます。 使用するACアダプタが決まっているならば、全波整流回路自体を無くしても構いません。 また、ダイオード1本にして両極性対応ではなく逆電圧防止だけとするのもよいでしょう。
L1はたまたま手持ち品があったものを使用しただけです。 L1自体無くても構いません。 もし追加されるならば定格電流1A以上のものを使用して下さい。 また、ノーマルモード対応として、+側にのみインダクタを設けるのも有りです。
電解コンデンサの耐電圧は高めが必要です。 回路中の耐電圧はマージンが少ないので、できれば下記のように見なおすことが望ましいです。
(a) C1,C7は最低25V、できれば35V以上。
(b) C5は最低16V、できれば25V以上。
LED1、R2は通電確認用表示です。 ご使用のLEDに併せてR2定数を見直して下さい。
LM317の出力電圧可変範囲は広いので、出力電圧の調整分解能を上げるためにVR1の可変抵抗は必ず多回転VRを使用して下さい。
出力端子は秋月電子通商の「[P-01404] ターミナルブロック 2.54mm 2ピン(緑)[縦] 1個 ¥40(税込)」を使用しています。
ケースは今回は手持ちの透明ケースを使用しています。 発熱が大きい場合はケースが変形する可能性がありますので金属製ケースにする必要があるかもしれません。 また、放熱用のファンを追加設置することも必要になります。
入力用安定化電源は秋月電子通商の「[M-00032] スイッチングACアダプター15V0.8A 内径2.1mm NP12−1S1508 1個 ¥600(税込)」を使用しています。
放熱板は手持ちのものを利用しています。 発熱量ではなく基板のサイズから決めています。 放熱板の取り付けに際してはシリコングリスを塗布して定電圧ICを取り付けています。
今回製作した電源アダプタ「いろいろボルト」の製作例を下記に示します。
【 基板部品面 】
【 基板ハンダ面 】
【 「いろいろボルト」 外観 】
【 「いろいろボルト」 斜視外観 】
4.電源アダプタ「いろいろボルト」の使用方法
電源アダプタ「いろいろボルト」の定電圧ICには小さいながら放熱板を設けています。 これは出力電流を少しでも取れるようにするために必要です。 入力電圧をVin、出力電圧をVout、整流回路での電圧降下をVrf、出力電流をIoとすると、定電圧ICの損失Pは下記のようになります。
P = (Vin−Vrf−Vout) × Io [W]
例えばVout=5Vの場合、Io=0.1A、Vrf=1V(1S4の場合)、Vin=15Vとすると P=0.9Wとなります。 一見小さく見えますが、15Wのはんだゴテがあることを考えて下さい。 決して小さい発熱量ではありません。 出力電流を確保しようとすると、この発熱を如何に逃がすかが必要になります。 実際に使用して定電圧ICの温度を確認して下さい。 定電圧ICに指を当て続けることができなければ温度上昇を下げる必要があるでしょう。 このときはVinを小さくするか、ファンで放熱することで対応して下さい。
出力電流をアップするために放熱板を大きくすることもできます。 大きくすれば、確かに出力電流を確保できて機能的に便利となります。 しかし、小さいままで多出力を得る事も便利です。 今回は後者を主な目的として製作していますので今回の製作例のようにしています。 よって、放熱板も必要最小限としています。
また、不用意に入力電圧Vinを高くしないようにして下さい。 定電圧ICの発熱量が大きくなりますので出力電流をその分小さくする必要が出てきます。
5.その他
今回の製作例は一例です。 定電圧ICを変えて自分に合った回路仕様にしてみて下さい。 特に、LT3080を使用することで出力電圧範囲を広げることができます。
また、せっかく安定化電源のACアダプタを使用していても、上記製作例ではACアダプタの出力をそのまま利用できません。 (整流回路とL1があるため。)
下記回路図のように入力側の回路を逆電圧防止用D1だけにすればこの問題も解決で、4出力の電源アダプタ「いろいろボルト」となります。
上図をクリックすると原寸大の回路図をダウンロードできます。
【 電源アダプタ「いろいろボルト」の回路図2 】
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