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Memorandumの小部屋

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通信機能付きディジタル式テスタ

のどれを選ぼうか?

1 仕様比較とテスタ選定

 秋月電子通商が取り扱っているデジタル式テスタは種類が多く、どれにしようか迷ってしまいます。 そのなかで、是非とも入手したかった通信機能付きテスタの仕様比較を表1に記載します。

 選定対象として、インダクタンス測定機能をとるか、測定分解能(精度・確度は問わない。相対的な差異が分かればよい。)をとるか悩むところです。 '97年9月現在ではインダクタンスならばM3870D、測定分解能ならばM4660Aが候補です。 最終的には、LCR測定を優先してM3870Dを購入しました。

(なお、テスタの選定において第一優先の安全性についてはほぼ同じと推測しています。)

 

表1 通信機能付きテスタの仕様比較 ('97年9月現在)
型式    M4660A    M4650CR    M3870D    M3860D    M3850D    M3610D   
価格    18500    13800    14800    14700    12700    9800   
メーカ    METEX    METEX    METEX    METEX    METEX    METEX   
最大表示    19999    19999    3999    3999    3999    1999   
DCV    最大    1000V    1000V    1000V    1000V    1000V    1000V   
分解能    10μV    10μV    100μV    100μV    100μV    100μV   
ACV    最大    750V    750V    750V    750V    750V    750V   
分解能    10μV    10μV    100μV    100μV    100μV    100μV   
DC A    最大    20A    20A    20A    20A    20A    20A   
分解能    100nA    100nA    10μA    100nA(*1)    100nA(*1)    100nA   
AC A    最大    20A    20A    20A    20A    20A    20A   
分解能    100nA    100nA    10μA    100nA(*1)    100nA(*1)    100nA   
抵抗    最大    20MΩ    20MΩ    40MΩ    40MΩ    40MΩ    2GΩ   
分解能    0.01Ω    0.01Ω    0.1Ω    0.1Ω    0.1Ω    0.1Ω   
容量    最大    200μF    20μF    400μF    400μF    400μF    ×   
分解能    1pF    0.1pF    1pF    1pF    1pF    ×   
インダクタンス    最大    ×    ×    40H    400mH    ×    ×   
分解能    ×    ×    10μH    10μH    ×    ×   
周波数    最大    20MHz    200kHz    4MHz    4MHz    40MHz    1MHz   
分解能    1Hz    1Hz    1Hz    1Hz    1Hz    1Hz   
温度    最高    +1200℃    ×    +1200℃    +1200℃    +1200℃    ×   
最低    -40℃    ×    -40℃(*2)    -40℃(*2)    -40℃(*2)    ×   
通信機能    有り    有り    有り    有り    有り    有り   

*1 取説では100nA 「かわら版」では10μA
*2 取説では-40℃ 「かわら版」では-50℃

 また、下記をクリックすれば秋月電子通商が取り扱っているほぼ全てのデジタル式テスタの詳細仕様比較を見ることができます。

 デジタル式テスタの詳細仕様比較を見る。

 

2 M-3870D (MEDE IN KOREA)

  2.1 パッケージ及び安全性について

m3870d3.jpg (16459 バイト) パッケージ外観を右に示します。

 パッケージ及び取り扱い説明書には安全に関する規格基準適合としてCEマーク・TUV・GSが記載されていますが、テスタ自体にはマーキングが刻印されていません。また、取り扱い説明書には IEC1010-1 / EN61010-1 Part1 Safety Class II に従ってテスト・製造されていると記載されていました。

 また、テスタリード棒も感電防止として差込口のガード及びリード棒先端部の滑り止めタイプとなっていますす。 (安価なテスタのテスタリード棒には感電防止策がなされていないものが多く非常に危険です。)

 安全規格およびテスタのリード先形状から推定するに、欧州向けを主体に製造されていると思われます。

 

  2.2 構成部品

M-3870を購入して入手できるモノは次のとおりです。 

m3870a3.jpg (22637 バイト)箱に入っているモノ

 D-sub25コネクタ側はメスで、AT互換機の25ピンのRS-232Cポートに直接接続することができます。

 

 m3870c3.jpg (22832 バイト)箱以外に添付されるモノ

単品で400円で販売しているものです。

9V 1.2Ah(1次電池で、充電不可)

単品で850円で販売しているものです。

m3870b3.jpg (17243 バイト) D-sub25(オス)〜D-sub25(オス)となっており、これは通信ケーブルのオスメス変換コネクタを兼ねています。 もともとは、PC9801シリーズ用との説明を秋月電子通商の店員さんからお聞きしています。

 

  2.3 測定準備

 早速、M-3870Dで測定を行ってみました。 測定時にはどのように測定対象とテスタとを接続するか理解しておく必要があります。

 まず、リード棒接続用バナナジャックは4個あり、20A(赤)・mA(赤)・COM(黒)・V/Ω(赤)となっています。 その他に熱電対・コンデンサ・インダクタンス測定端子、トランジスタ測定端子があります。

 接続方法をまとめると表2のようになります。 機能が多いと、接続を変更するのも結構面倒そうですね。 リード棒・熱電対・通信用ケーブルを接続した様子上記画像に示します。 

表2 測定時の接続方法
電圧・抵抗・
周波数・
ロジック
リード棒接続ジャック : V/Ω〜COM
電流
〜399.9 mA
リード棒接続ジャック : mA〜COM
電流
〜 1999.9 mA
リード棒接続ジャック : A〜COM
温 度 中央のロータリィSWの左側のソケットの内側2つ
のソケット。 ±逆差し防止付き。

 普通の熱電対用コネクタが使用できそうです。

コンデンサ

インダクタンス
中央のロータリィSWの左側のソケットの外側2つ
のソケット。

ソケットに接続できない形状の素子があることを
考えれば、測定用のクリップ付きリード線が欲し
いですね。

hFE 中央のロータリィSWの右上側の丸形ソケット。
NPN用とPNP用別々の接続穴有り。

 

  2.4 測定結果

 このテスタを購入する際に考慮したインダクタンスの測定結果比較を表4に示します。また、コンデンサについても同様に測定結果比較を表5に示します。リファレンスとしてLCRメータで測定した結果を記載しておきます。

 測定結果からM-3870D及び各種キットとも、上一桁は合っているようで、オーダーを知る(大ざっぱに定数を掴む)程度ならば使いモノになりそうです。

表4 インダクタンス測定結果比較
表示値    公称値    LCRメータ
(at 1kHz)
   
LCRメータ
(at 100kHz)
   
M3870D    デジタル
インダクタンス
メータキット
   
471   0.47mH 0.468mH 0.454mH   0.38mH 0.448mH
102   1.0mH 0.993mH 0.983mH   0.91mH 0.975mH
392   3.9mH 3.699mH 3.54mH   3.51mH 3.58mH
103  10mH 10.072mH 10.17mH   9.82mH 9.95mH
473  47mH 47.1mH 50.8mH  45.6 mH 47.1mH

 

表5 コンデンサ測定結果比較
表示値    公称値     LCRメータ 
(at 100kHz)
   
 M3870D     微少容量計
キット
   
デジタル
容量計
キット
   
3 3pF - 3pF 2.7pF -
10 10pF - 10pF 10.4pF -
470 47pF 41.4pF 48pF 49.4pF -
101 100pF 96.0pF 104pF 95.6pF 100pF
471 470pF 431.8pF 465pF 473pF 456pF
102 1.00nF 0.9687nF 1.002nF 0.989nF 0.980nF
4640 4.64nF 4.610nF 4.51nF 4.49nF 4.61nF
472 4.70nF 4.732nF 4.65nF 4.65nF 4.66nF
103 10.0nF 9.568nF 9.72nF 8.91nF 10nF
473 47.0nF 48.3nF 46.5nF - 46.4nF
104 100.0nF 98.2nF 101.4nF - 101.1nF
1 1μF - 0.975μF - 1.003μF
10 10μF - 9.65μF - 9.72μF
100 100μF - 119.6μF - 96.2μF

 

 微小コンデンサや微小インダクタンス・大容量コンデンサについては専用のキットを使った方がよさそうですね。

 特に高周波での測定や使用する部品の差異を知るためにはもう少し分解能が欲しいですね。 コンデンサやインダクタンスについては 1pF・0.1μH の分解能、また、電流については100nAの分解能が欲しいところですね。 インダクタンスにとらわれずM-4660Dとすればよかったかなと、ちょっと後悔。

 測定結果表示はちょっと遅い気がします。抵抗測定でも1秒以上かかっているようです。 Reading Timeは10 reading per second(表示更新は1秒当たり10回)で決して遅くない、むしろ表示がちらついて早すぎるくらいなのですが。

 マン・マシン・インターフェースは、個人的には、やはりFLUKEのテスタが一番と思います。 でもFLUKEのテスタは値段が高くて手が出ません。

 

m3870b3.jpg (17243 バイト)3 通信機能

  3.1 通信機能

 パソコンとの通信はRS-232Cで行います。 RS-232Cの信号のうち、RD・DTR・RTS・TDの4つの信号を使用しています。

 通信用ケーブルのテスタ側は右図に示すようにテスタ右側面に専用コネクタで接続されます。 他端はD-sub25ピンのメスとなっており、AT互換機の25ピンのRS-232Cポートの直接接続できます。(ストレート接続) 通信パラメータは下記の設定のみサポートしているようです。

   通信速度     : 1200 baud   
   文字コード     : 7bit ASCII   
   パリティ     : None   
   ストップピット     : 2bit   

 データフォーマットは14文字固定長のシンプルなフォーマットで、機能選択+測定数値+単位+CRからなっています。 簡単な例は記載されていますが、詳細については記載されていませんので、通信ソフトを自作される場合は解読する必要がありそうです。 Single Readingならばコマンドが記載されていますので簡単にできると思います。 その他にどのようなコマンドがあるかまでは調べていません。

 また、パソコンとテスタとの通信ソフトのサンプルとしてBASICでのプログラムが記載されています。 わずか7行の、ごく一般的なRS-232Cプログラムで、通信を行うことができます。 なお、1秒当たり何回データを更新できるかまでの確認は行っていません。

 

  3.2 付属ソフト

 テスタにはAT互換機用のMS-DOS用及びWindows3.1用のソフトが付属されています。 その他にNECのPC-98シリーズ向けに「METEX M4650CR/M3850対応データ通信ソフト(秋月オリジナル版 PC9801シリーズ用)」も付属しています。

 これらのソフトのうち、AT互換機用のWindows3.1用のソフトScopeViewをWindows95にインストールして使用しています。

ScopeView Version1.03
Copyright(c) 1994,1995, AGA Associates

 ScopeViewのメニュー体系を下記に示します。

 これらの表示例からこの画面に戻るときはブラウザのアイコンの「戻る」にて復帰して下さい。

 

 ここをクリックすれば実行中断Window例を表示します。

 そのため、レンジホールド(R-H)設定を行って測定レンジをホールドしておく必要があります。
 ところが、コンデンサと周波数についてはレンジホールドができません。 コンデンサと周波数測定ではレンジが変化しない範囲で測定して下さい。
 なお、LoggerとMeterのモードではこの制約はありません。

 

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