Memorandumの小部屋
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ケースが溶けちゃうACアダプタ!!!
電解くん、大丈夫?
本ページではACアダプタを解体して観察しています。 これは自己責任で実施しているものであり、開封品を廃棄せずに使用を継続して事故を起こしても、全て自分の責任となります。 解体の真似 をしないで下さい。 |
1.背景
GPSロガーを使用する際に「いっこいっこ充放電繰り返し器」でNi−HM電池を充放電しようとしたところ、放電開始した途端に何故か「いっこいっこ充放電繰り返し器」のLEDが暗くなり、正常に動作しなくなりました。 「いっこいっこ充放電繰り返し器」を壊したのかと思って調べましたが電源ライン間の抵抗値は低くはありません。 と、いうことはACアダプタ(秋月電子通商ブランドNP12−1S0523 (旧品))がおかしいのかと思い、ACアダプタの電源電圧を測定すると2V程度しかありません。 こりゃいかんということでフタを開けると電解コンデンサはパンクはしていないようですが、頭に何か付着しています。 ケースを見るとコンデンサに対向している部分が溶けているではありませんか!!! 発煙、発火事故にならなくてよかった。 下手すればPS事故で訴。。。。。
【 NP12−1S0523 (旧品) 開封時外観 】
溶損部の周辺には何か白い粉のような付着物も観察されさました。
【 NP12−1S0523 (旧品) カバー溶損部 】
最近のACアダプタは大きさの割りに出力電力が大きいと思っていましたが、何か無理をしているように思えます。 どの程度無理をしているのかを確認するために、秋月電子通商より販売されている5V出力のACアダプタを調べてみる事にしました。
なお、本ページで紹介したACアダプタの製品情報を「スイッチングタイプACアダプター(5V)」に掲載しています。
2.調査方法
今回の調査では、ACアダプタ出力の過負荷保護回路動作状態の確認、最大出力電流での電解コンデンサ温度上昇確認、コンデンサメーカ・型式の確認を実施する事にしました。
調査に使用する負荷としては「アルカリ電池1本でMD1枚も聴けない!!! 単三乾電池の放電特性を探る」では抵抗を使用していましたが、負荷電流を一定にする事はできません。 このため、前々から製作しようと思っていた簡易電子負荷(抵抗成分のみ)を製作することにしました。
今回製作した回路図を下記に掲載します。
上図をクリックすると原寸大の回路図にアクセスできます。
【 電子負荷回路図 】
電源は定電圧+15Vdc、出力電流0.5A程度のACアダプタを使用します。 LM317を使用して7.5Vdc電圧をつくり、±7.5Vdcの電源電圧として使用しています。 このため、+15Vdcの電源は、本回路専用に使用して下さい。 他回路の電源として使用する事はできません。
ACアダプタの負荷として動作するQ1のエミッタに0.1Ωの抵抗R12を設けて、この抵抗R12の両端電圧を測定することで電流を検出しています。 本回路ではこの電流が一定になるように制御します。
電流検出信号は、3種類のレンジのなかから一つを選択できるようにしています。 今回はR33を使用して測定しました。
出力設定はジャンパーピンで、一定制御、ランプ制御、もしくは、外部設定のいずれかを選択できるようにしています。
負荷特性を測定する時はランプ制御を選択し、SW1を押すことでランプ信号を発生しています。
ランプ制御の最大負荷電流はVR51を調整して設定します。
一定制御時の負荷電流はVR52を調整して設定します。
ランプ制御は、直線的な変化ではなく、指数曲線となる信号を発生します。
ランプ制御では、出力オン時間調整(R51,C51)、及び、変化傾き調整(R54,C54)のために抵抗値、コンデンサ静電容量の定数変更もできるようにしておけば便利です。 これらの抵抗、コンデンサは差し替えできるようにピンソケットを使用して交換できるようにしています。 今回の調査ではR51,R54は1MΩ固定とし、C51,C54は10μF〜470μFの範囲で必要に応じて部品交換しました。
R11の抵抗値は負荷電流で変更します。 5V電源では、2.3A以上の場合、R11は短絡して使用します。
電流検出のR12にはACアダプタの出力電流の他にQ1のベース電流Ibも流れます。 通常、この回路では、このベース電流Ibが測定誤差となりますので、Q1はできる限り電流 増幅率hfe の高い品種を使用してベース電流Ibを小さくできるようにする必要があります。 今回は秋月電子通商で販売している「トランジスタ 2SB1647 2SD2560 150V15A ダーリントン」の2SD2560を使用しています。 実測ではhfe=3000〜17000程度(Ic=4AでIb=0,23mA)でした。 ここまで大きいとIbに起因する誤差は無視してもよいでしょう。
回路図左側破線枠内が写真左側放熱板部分です。
【 電子負荷外観 】
【 電子負荷 電力制御部分外観 】
【 電子負荷制御回路(部品面) 】
【 電子負荷制御回路(ハンダ面) 】
以下に、上記電子負荷を使用して調査したACアダプタの調査結果を掲載します。
【 ACアダプタ銘板 】
AC側平滑用 | Lelon 10uF 400V RGA 105℃ |
DC側平滑用 | Lelon 1000uF 6.3V RJX 105℃ |
旧品はコンデンサメーカ、型式は販売仕様に記載されていません。
【 ACアダプタ 内部外観 】
【 ACアダプタ 内部外観(斜視) 】
【 基板ハンダ面 】
負荷電流を定格以上流した場合の出力電圧測定の時間変化です。
【 負荷電流 v.s 出力電圧 (時間変化) 】
過電流に対しては1.5A 垂下特性の結果でした。
【 負荷電流 v.s 出力電圧 (負荷変化) 】
ΔT=34.1℃でした。
【 コンデンサ温度上昇 】
【 ACアダプタ銘板 】
秋月電子通商のHPでは「日本製電解コンデンサー採用!スイッチングACアダプターの寿命に大きく影響する電解コンデンサーに日本製(ルビコンML(5000h) ZLH(6000h、8000h) BXC(10000h)シリーズ)を採用しました。 」と記載されています。 |
AC側平滑用 | Rubycon 6.8uF 400V BXC 105℃ |
DC側平滑用 | Rubycon 1000uF 10V ZLH 105℃ |
Rubycon 100uF 16V ZLH 105℃ |
【 ACアダプタ 内部外観 】
【 ACアダプタ 内部外観(斜視) 】
【 基板ハンダ面 】
負荷電流を定格以上流した場合の出力電圧測定の時間変化です。
【 負荷電流 v.s 出力電圧 (時間変化) 】
過電流に対しては1.7A フの字特性の結果でした。
【 負荷電流 v.s 出力電圧 (負荷変化) 】
ΔT=41.9℃でした。
【 DC側平滑用コンデンサ温度上昇 】
【 ACアダプタ銘板 】
秋月電子通商のHPでは「アダプターの寿命を左右する電解コンデンサーに高信頼品(ルビコンZLHシリーズ(6000時間)、MLシリーズ(5000時間)、YXAシリーズ(2000時間))を採用しています。 」と記載されています。 |
AC側平滑用 | Rubycon 10uF 400V YXA 105℃ |
DC側平滑用 | Rubycon 1000uF 10V ZLH 105℃ |
Rubycon 100uF 16V ZLH 105℃ |
【 ACアダプタ 内部外観 】
【 ACアダプタ 内部外観(斜視) 】
【 基板ハンダ面 】
負荷電流を定格以上流した場合の出力電圧測定の時間変化です。
【 負荷電流 v.s 出力電圧 (時間変化) 】
過電流に対しては3.1A 垂下特性の結果でした。
【 負荷電流 v.s 出力電圧 (負荷変化) 】
ΔT=54.7℃でした。
【 DC側平滑用コンデンサ温度上昇 】
【 ACアダプタ銘板 】
秋月電子通商のHPでは「アダプターの寿命を左右する電解コンデンサーに高信頼品(ルビコンZLHシリーズ(6000時間)、PXシリーズ(5000時間))を採用しています。」と記載されています。 |
AC側平滑用 | Rubycon 47uF 200V PX |
DC側平滑用 | Rubycon 1000uF 10V ZLH 105℃ |
Rubycon 470uF 10V ZLH 105℃ |
【 ACアダプタ 内部外観 】
【 ACアダプタ 内部外観(斜視) 】
【 基板ハンダ面 】
負荷電流を定格以上流した場合の出力電圧測定の時間変化です。
【 負荷電流 v.s 出力電圧 (時間変化) 】
過電流に対しては3.2A 垂下特性の結果でした。
【 負荷電流 v.s 出力電圧 (負荷変化) 】
ΔT=60.0℃でした。
【 DC側平滑用コンデンサ温度上昇 】
【 ACアダプタ銘板 】
AC側平滑用 | Mucun 47uF 200V SM 105℃ |
DC側平滑用 | Lelon 1000uF 10V RJX 105℃ |
Mucun 470uF 10V SM 105℃ |
旧品はコンデンサメーカ、型式は販売仕様に記載されていません。
【 ACアダプタ 内部外観(コンデンサ交換前) 】
【 ACアダプタ 内部外観(コンデンサ交換前) (斜視) 】
【 基板ハンダ面(コンデンサ交換前) 】
負荷電流を定格以上流した場合の出力電圧測定の時間変化です。
【 負荷電流 v.s 出力電圧(コンデンサ交換後) (時間変化) 】
該当品の内部コンデンサ(Lelon 1000uF 10V RJX 105℃)が発熱劣化したため、Rubycon製 1000uF 10V MCZ
105℃に交換して測定しています。 |
【 負荷電流 v.s 出力電圧(コンデンサ交換後) (負荷変化) 】
該当品の内部コンデンサ(Lelon 1000uF 10V RJX 105℃)が発熱劣化したため、Rubycon製 1000uF 10V MCZ
105℃に交換して測定しています。 |
【 コンデンサ温度上昇(コンデンサ交換後) 】
【 ACアダプタ銘板 】
AC側平滑用 | TK 33uF 400V UTWHS 105℃ |
DC側平滑用 | TK 1500uF 10V UTWXZ 105℃ |
TK 220uF 10V UTWXZ 105℃ |
秋月電子通商のHPには、コンデンサメーカ、型式は記載されていません。
【 ACアダプタ 内部外観 】
【 ACアダプタ 内部外観(斜視) 】
【 基板ハンダ面 】
負荷電流を定格以上流した場合の出力電圧測定の時間変化です。
【 負荷電流 v.s 出力電圧 (時間変化) 】
過電流に対しては3.9A フの字特性の結果でした。
【 負荷電流 v.s 出力電圧 (負荷変化) 】
1000s付近で熱電対の取付やり直しをしています。
ΔT=63.5℃でした。
【 DC側平滑用コンデンサ温度上昇 】
【 ACアダプタ銘板 】
秋月電子通商のHPでは「アダプターの寿命を左右する電解コンデンサーに高信頼品(ルビコンZLHシリーズ(6000時間)、PXシリーズ(5000時間))を採用しています。 」と記載されています。 |
AC側平滑用 | JAMICON 47uF 200V TK 105℃ 黒色 |
JAMICON 47uF 200V TH 105℃ 茶色 | |
DC側平滑用 | JAMICON 1200uF 10V WL 105℃ |
TK 220uF 10V UTWXZ 105℃ |
【 ACアダプタ 内部外観 】
【 ACアダプタ 内部外観(斜視) 】
【 基板ハンダ面 】
負荷電流を定格以上流した場合の出力電圧測定の時間変化です。
【 負荷電流 v.s 出力電圧 (時間変化) 】
過電流に対しては4.7A 垂下特性の結果でした。
【 負荷電流 v.s 出力電圧 (負荷変化) 】
ΔT=49.5℃でした。
【 DC側平滑用コンデンサ温度上昇 】
今回の最大定格負荷時の温度上昇、過負荷保護の調査結果をまとめて下表に掲載します。
型式 |
入手時期 |
入力電圧 |
DC側平滑用コン |
過負荷保護 |
旧品 |
100−240Vac |
ΔT=34.1℃ |
1.5A |
|
現行品 |
100−240Vac |
ΔT=41.9℃ |
1.7A |
|
現行品 |
100−240Vac |
ΔT=54.7℃ |
3.1A |
|
現行品 |
100−120Vac |
ΔT=60.0℃ |
3.2A |
|
旧品 |
100−120Vac |
ΔT=46.9℃ |
3.5A |
|
現行品 |
100−240Vac |
ΔT=63.5℃ |
3.9A |
|
現行品 |
100−120Vac |
ΔT=49.5℃ |
4.7A |
電解コンデンサの温度上昇は全般的に高すぎるようです。 ACアダプタ内環境温度が40℃と仮定すると、塩化ビニル耐熱温度65℃に対してはΔT<25℃、耐熱塩化ビニルだとすると耐熱温度85℃に対してはΔT<45℃となります。 いずれにしても、上記結果からは要求仕様を満足しない物が多い事になります。 (保存温度が80℃となっていますので、耐熱塩化ビニルかもしれません。)
過負荷保護回路の過電流検出設定が高すぎます。 保護回路が動作するまでは定格以上の出力電流が継続して出力されますので、本来はその状態でも発煙、発火、ケース溶融なんてあってはなりません。 一般的な組込用スイッチングSW電源ですら105%程度の設定となっています。 上記結果の120〜150%設定はあまりにも大きすぎます。 これらのACアダプタでPS事故は発生していないのでしょうか。 当方の経験からも、とても気になります。
上記結果からは、これらのACアダプタを定格電流の50%以上で数分以上使用する事はお勧めしません。 怖い、怖い。
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