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Memorandumの小部屋

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電力調整器「ちょこっと電熱器」

注意

  •  本ページの製作例は100VACラインから非絶縁となっていますので、感電には注意して下さい。

  •  マイコン部回路を含めて全ての部品が100VACラインから絶縁されていませんので、導電部に触ると感電します。

  •  本事例を製作される場合は、100VAC/150VDCの電圧に耐える絶縁カバー(ケース)の中に収納して下さい。 また、外部に電線を引き出すなどの行為も決して行わないで下さい。

  •  動作確認したい場合は、電池駆動のテスタは使用可能ですが、感電に注意して下さい。 オシロスコープで の波形観測は原則実施不可です。


1.背景

  パソコンで真夜中までこそこそしているときに暖かい飲み物を机の横に置いて作業しています。 でも、時間とともに冷えてしまい、最後はコールドの飲み物になってしまいます。 最近はUSBポートを使った保温器があるようですが、気休めにしかならないようです。 また、AC電源を用いた保温器やコーヒーウォーマもあるようですが、ちょっと発熱量が不足したり、逆に熱くなり過ぎるようです。 また、温度コントローラ付きとなると電熱器本体が大きく、机の脇に置く気になりません。

 さあ、どうしようとネット通販を調べていると電熱器本体のサイズが小さい電熱器を見つけました。 しかも100VACで250W、240VACで360Wの電源切替付きです。 240VAC仕様に設定して100VACラインに接続すると発熱量は約62Wになる計算です。 60Wnoハンダごてを想像しました。 これならば飲み物を丁度良い温度にすることができそうです。 と、いうことで早速この電熱器を購入です。

 

海外の利用も想定した商品です。 電熱器の部分だけを利用します。

【 マルチクッカー TVR21BK パッケージ外観 】

 

電熱器だけを利用します。 サイズはW125mm×D125mm×H65mmです。

【 電熱器 本体外観 】

 

 電源切替えスイッチと銘板の外観です。 空気穴のあけ方はさすがにMADE IN CHINAです。 PSEマークはありますが、ULマーク、CEマーク などが付いていません。 本当に海外で使用してもいいのかな?

【 電熱器 底面外観 】

 

 さっそく、マグカップを温めるためにこの電熱器を使ってみました。 結果、通電してマグカップを置きっぱなしにすると熱いです。 取っ手を持つこともできません。 なお、陶器製のマグカップは熱伝導度が悪いため、この電熱器とは相性がよくないようです。 取っ手は熱いのに飲み物はまだ冷たい、こりゃなんじゃ!です。 この電熱器には金属製のカップ、金属ケースのドリンクでないといけないようです。

 

陶器製マグカップは適していません。

【 適切でない使用例 】

 飲み物のカップに制限はあるものの、電熱器の電力制御さえできれば使い物になります。 さあ、電力調整器を更に買うべきか? 一般的な小型で安価な電力調整器は位相制御方式でノイズが発生します。 買う気になりません。
 

 ゼロクロス方式のSSRは大好きです。 電熱器の発熱は時定数が長いので瞬時電圧制御をする必要はありません。 そうです、交流波形の位相0°で適当にオンオフ制御すればいいのです。 さあ、自分で電力調整器「ちょこっと電熱器」をつくりましょう。

 

2.電力調整器「ちょこっと電熱器」 の構想、試作

 今回の電力制御方法、基本コンセプトは以下のようにしました。

(1)

 交流波形10周期を1サイクルとします。

(2)

 10周期1サイクルのうち、全周期オフ、1周期だけオン、2周期だけオン、・・・・・、9周期オン、全周期オンのように周期単位でオンオフを制御します。

(3)

 オンオフ制御素子はゼロクロス式SSR(ソリッドステートリレー)とします。 SSRは秋月電子通商で販売しているシャープ製S216S02(250VAC16A)を利用します。 ゼロクロス式SSRであれば負荷に対応した別形式のSSRに置き換え可能です。 ただし、定格電圧は250VAC以上、定格電流は負荷の2倍以上の仕様のSSRを採用します。

(4)

 交流波形を全波整流して同期信号を得ます。 同期信号はフォトカプラで絶縁します。

(5)

 同期信号は交流波形半周期毎に1パルスを発生させます。 オンオフ制御は半周期毎に可能ですが、電圧/電流波形にDC成分を生じないように1周期毎のオンオフ制御とします。

(6)

 オンオフ制御にはPICマイコンを使用します。 制御自体はシンプルなので、手持ち(死蔵)のPIC16F84Aを利用することにしました。

   

 以上をもとに試作回路を製作して所望の動作をすることを確認しました。 100VACラインの波形観測は「DSO Quad」をフローティング状態で利用しすることで観測しています。

水色:電流波形 、 黄色:電圧波形

【 試作回路動作確認 】

 

3.電力調整器「ちょこっと電熱器」 の回路

 電力調整器「ちょこっと電熱器」 の回路を下図に掲載します。 

上記回路図をクリックすると原寸大の回路図を見ることができます。

【 電力調整器「ちょこっと電熱器」 の回路 】

 

(1)

 AC−DCコンバータ回路はFDS210Bを利用しています。  このため、マイコン部分の回路は100VACラインから非絶縁となっています。 この回路を採用したのは小型化を目的としています。 FDS210Bと3端子レギュレータ回路は、5V出力0.3A以上のACアダプタに置き換えることができます。

(2)

 JP11はAD−DCコンバータの動作確認時に5Vdc負荷を切り離して回路保護するために設けています。 動作確認後は短絡したままで利用します。

(3)

 IC2の5Vdc3端子レギュレータは0.3A以上の代替え品に置き換えできます。 3端子レギュレータの発熱を考慮すると外形がTO−92の3端子レギュレータは不適です。

(4)

 L11は太陽誘電製LHLZ06NB 102J(1mH 0.16A(max.)) を利用しています。 定格電流が小さいので気になっていましたが、特に支障がないようです。 この部品は千石電商で販売していました。

(5)

 C11はセラミックコンデンサで、おまじないとして設けています。 aitendoで購入しました。 なお、このコンデンサは必須ではありません。

(6)

 R11は突入電流低減のために設けていますが、これもおまじないです。 この抵抗も必須ではありません。

(7)

 C12(4.7μF 250V)は日本ケミコンEKMG251ELL4R7MHB5Dを利用しています。 この部品は千石電商で販売していました。 当初は秋月電子通商の電解コンデンサ(4.7μF 200V)を利用しようとしましたが、定格電圧が200Vと若干低いので不採用としました。

(8)

 ツエナーダイオードZD11、ZD12、ZD13、ZD14の定格電圧は目安です。 この値に近い定格のツエナーダイオードに置き換えできます。 今回は「定電圧用ダイオードSP(20種/400本入り) (ZDIODE-SP20)」を利用しました。

(9)

 数字表示器は秋月電子通商の「青色7セグメントLEDシリアルドライバキット」を利用しています。

(10)

 ヘッダーピンJP31はPICマイコン書き込み用のPICKIT3接続用です。

(11)

 XC1(20MHz)はセラミック発振子(両端コンデンサ内蔵:セラロック)を利用しています。

(12)

 UPスイッチ、Downスイッチは、感電防止のために、指が接触する部分が確実に絶縁されているスイッチを利用しています。  今回は秋月電子通商のタクトスイッチ(大)10個セット[1273HA−160G−G]を利用しています。

(13)

 JP32,JP33は、過温センサなどを想定したインターロック信号入力です。 

(14)

 R31〜R38は10kΩで製作しています。 (別用途にも流用できるように220kΩに変更することが望まれます。)

(15)

 CN2、CN3は今後のアップグレード、別用途のために設けています。  R31〜R38の抵抗値変更はこの対応を想定したものです。

(16)

 ケースはテイシン電機のTC−111を利用しました。 水色の保護シートを付けたままにしています。 穴あけ加工は、ドリルで丸アナをあけてからハンドニップター、やすりで仕上げています。

   

 

4.電力調整器「ちょこっと電熱器」 の製作

 電力調整器「ちょこっと電熱器」 の製作例を以下に示します。

 

 操作用部品取付けのために操作部用基板を垂直に立てています。 この操作部用基板にUpスイッチ、Douwスイッチ、「青色7セグメントLEDシリアルドライバキット」を取付けています。
 赤色スイッチがUpスイッチ、青色スイッチがDownスイッチです。

【 基板外観1 】

 

【 基板外観2 】

 

【 基板外観3 】

 

 「青色7セグメントLEDシリアルドライバキット」のLED表示器がスイッチより奥に位置するように、7セブメントLEDと青色7セグメントLEDシリアルドライバ基板の間に操作部用基板を取付けています。

【 基板外観4 】

 

 100VAC回路はできる限り沿面距離を確保するようにします。 相間が2ピッチとなるように部品実装、部品接続するようにしました。
(全てそのとおりにはできていません。)
 SSRの上側に位置する部分には部品実装、配線パターンを設けていません。

【 基板外観5 】

 

 SSRの放熱のために、SSR裏面に熱伝導用シリコングリスを塗布してケースに直付けしています。 SSRリード線下部には絶縁のためにポリイミドテープとビニルテープを貼り付けています。

【 SSR取り付け外観1 】

 

 SSRの固定が片持ちとなり、SSR裏面とアルミケースの間に隙間が生じそうなのでアルミテープで固定しました。

【 SSR取り付け外観2 】

 

 ACコードの口出し部にはコードブッシュを設置しています。 両方ともネジ式を利用したかったのですが、部品手持ち品の都合でネジ式とはめ込み式を1個づつ用いました。 コードブッシュは千石電商で購入したY−85、および、S−08です。
 また、SSRのリード線に外力が加わらないように、ACコード入口部でケースに固定しています。

【 総組み 外観1 】

 

通電して動作確認をしている様子です。

【 総組み 外観2 】

 

カバーを取付けました。

【 総組み 外観3 】

 

【 総組み 外観4 】

 

【 総組み 外観5 】

 

裏面のネジは全て皿ネジとして出っ張りを無くしています。

【 総組み 外観6 】

 

5.電力調整器「ちょこっと電熱器」 用PICマイコンプログラム

 電力調整器「ちょこっと電熱器」 の操作方法を以下のようにしました。

(1)

 10周期1サイクルのうち、オンする周期の数を0周期から10周期までをUpスイッチ、Downスイッチで設定します。 オンする周期の数を7セグメントLEDで表示します。

(2)

 通電直後にLED8表示、消灯を複数回繰り返します。

(3)

 通電直後はオンする周期を0周期とします。

(4)

 Upスイッチを1回押すことでオンする周期の数を1づつ増加します。  Downスイッチを1回押すことでオンする周期の数を1づつ現象します。

(5)

 Upスイッチ、Downスイッチを押し続けると、約1秒ごとに自動的に増減します。

(6)

 Upスイッチ、Downスイッチを同時に押すと、Downスイッチを優先します。

(7)

 オンする周期が0〜9の場合、7セグメントLED表示に数値”0”〜”9”を表示します。 オンする周期が10(連続オン)の場合は”F”表示します。 なお、この表示はEEPROMで点灯する7セグメントLEDを指定するとができます。

(8)

 7セグメントLEDを用いてエラー表示をします。 表示は”E”+”r”+”r”+数字となります。 通電オフ時にはErr3、もしくはErr4表示をすることがあります。

Err1

JP32が開放されている。 (RB0=High) (インターロック信号未使用時はJP32を短絡する。)

Err2

JP33が短絡されている。 (RB1=Low) (インターロック信号未使用時はJP33を開放する。)

Err3

交流電源のパルス入力(RA4)において、Highレベル信号を検出できない。

Err4

交流電源のパルス入力(RA4)において、Lowレベル信号を検出できない。

 

 

 現状ではPICマイコンマイコンのプログラムを非公開とします。 ご要望の方はメールでお問い合わせ願います。 メモのためにPICマイコン内のEEPROMデータ設定を下記に記載します。

EEPROMデータ

アドレス

データ内容

デフォルト
16進数

$00

オン周期0のSSRオンパターン(USB側)

'00'

$01

オン周期0のSSRオンパターン(LSB側)

'00'

$02

オン周期1のSSRオンパターン(USB側)

'00'

$03

オン周期1のSSRオンパターン(LSB側)

'01'

$04

オン周期2のSSRオンパターン(USB側)

'00'

$05

オン周期2のSSRオンパターン(LSB側)

'03'

$06

オン周期3のSSRオンパターン(USB側)

'00'

$07

オン周期3のSSRオンパターン(LSB側)

'07'

$08

オン周期4のSSRオンパターン(USB側)

'00'

$09

オン周期4のSSRオンパターン(LSB側)

'0F'

$0A

オン周期5のSSRオンパターン(USB側)

'00'

$0B

オン周期5のSSRオンパターン(LSB側)

'1F'

$0C

オン周期6のSSRオンパターン(USB側)

'00'

$0D

オン周期6のSSRオンパターン(LSB側)

'3F'

$0E

オン周期7のSSRオンパターン(USB側)

'00'

$0F

オン周期7のSSRオンパターン(LSB側)

'7F'

$10

オン周期8のSSRオンパターン(USB側)

'00'

$11

オン周期8のSSRオンパターン(LSB側)

'FF'

$12

オン周期9のSSRオンパターン(USB側)

'01'

$13

オン周期9のSSRオンパターン(LSB側)

'FF'

$14

オン周期10のSSRオンパターン(USB側)

'03'

$15

オン周期10のSSRオンパターン(LSB側)

'FF'

$16

オン周期10の7セグメントLED点灯パターン指定。


 

7bit

セグメント DP

6bit

セグメント g

5bit

セグメント f

4bit

セグメント e

3bit

セグメント d

2bit

セグメント c

1bit

セグメント b

0bit

セグメント a

 

表示'F'

'71'

$17


 

7bit

未使用

6bit

未使用

5bit

未使用

4bit

未使用

3bit

未使用

2bit

未使用

1bit

未使用

0bit

SSRオンの論理設定

 0:正論理(オン時High)
 1:負論理(オン時Low)

 

'00'

$18

通電直後のオン周期設定

'00'

  

6.電力調整器「ちょこっと電熱器」 の動作例

 電力調整器「ちょこっと電熱器」 を実際に使用しているときの様子を以下に示します。 この電熱器では、オン周期2設定で通電した状態で放置しておくと丁度良い温まり具合です。 寒い夜の寝る前に冷たい缶を置いて通電したままにしておきます。 翌朝には丁度 よい温かさとなっています。 もう少し細かく温度調整できれることが望まれます。 拡張コネクタを利用してこれに対応する予定でいます。

 

【 ウーロン茶缶 】

 

【 コーヒー缶 】

 先に記載のように陶器製のカップは適しません。 金属製缶のみに対応しています。

 参考までに電熱器の電流、電圧波形を観測した結果を下記に掲載します。 オン周期設定に応じて交流波形のオンの数が変化しています。    

オン周期

波形

      水色:電流波形 、 黄色:電圧波形
     縦軸は任意スケールです。   

電熱器消費電力
(オン周期10を100%)

0%

10%

20%

30%

40%

50%

60%

70%

80%

90%

10

100%

   


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