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Memorandumの小部屋

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あれもこれも充放電器

 本製作例を基にして事故を生じても、当方は何ら責任を負いません。
 本製作例ではリチウム電池の充放電を行います。 使い方、設定を誤ると発煙発火事故を起こします。 本製作例を参考にリチウムイオン電池を充電される場合は、リチウムイオン電池の使い方を理解のうえ製作・充電を行って下さい。

1.背景

 二次電池に関していくつかの問題を抱えていました。

 これらの二次電池対応のために「いっこいっこ充放電繰り返し器」をベースにして、上記対応のできる「あれもこれも充放電器}を製作することにしました。


はじめに

 今回の製作は大きく2つの部分に分けて製作しています。 当初はリチウムイオン電池のフル充電は行わず、保存用の50%充電を行う「あれもこれも充放電器」本体を製作しました。 本器では006P(8.4V)用NiMH電池の充放電機能と、時間管理によるリチウムイオン電池の50%充電のできるリチウムイオン電池充放電器を考えていました。 その後、やはりフル充電に近い充電を行いたいということで、リチウムイオン電池用保護回路基板を追加しました。

 いか、これらの製作例について順番の説明します。

2.あれもこれも充放電器本体

2.1 回路図

 「あれもこれも充放電器」本体は、「いっこいっこ充放電繰り返し器」をベースにして、二次電池1個専用の充放電回路としました。 この充放電回路を複数回路設けることで一度に何個でも充放電できるようにします。 今回はコンパレータLM339(コンパレータを4個内蔵)をフルに利用するめ4回路構成としました。 今回の製作の回路図を下記に示します。

上図をクリックすると原寸大の回路図をダウンロードできます。

【 「あれもこれも充放電器」本体回路(4回路) 】

 

 上記回路図の上から回路A,回路B,回路C,回路Dとし、各回路は下記の二次電池を対象としています。 また、放電終了電圧、充電電流は下表の数値となるように調整しています。

回路

電池種類

メーカ

型式

電圧・容量

リチウムイオン
電池

Wha Fat
Technological Co.,Ltd

LC10440

3.7V 500mA

リチウムイオン
電池

Wha Fat
Technological Co.,Ltd

LC10440

3.7V 500mA

リチウムイオン
電池

NTT DoComo

F09 or F12

3.7V 770mA/670mA

NiMH電池

GOLDEN POWER
CORPORATION (HK) LTD.

MR-250F

8.4V 250mA

  本回路では006P用電池の充電を行いますので電源電圧は12Vdc必要です。 3.7Vリチウム電池だけであれば電源電圧9Vdcで十分です。 また、充電電流は150mA程度以下になるようにして下さい。 (MR−250F充電時、電池電圧は10Vを超えます。)

 放電終了電圧、充電電流は下表の数値となるように調整しています。

回路

電池種類

型式

放電終了電圧

充電電流

リチウムイオン
電池

LC10440

2.75V
(VR21)

100mA
(VR32a)

リチウムイオン
電池

LC10440

2.75V
(VR22)

100mA
(VR32b)

リチウムイオン
電池

F09 or F12

2.75V
(VR23)

154mA
(VR32c)

NiMH電池

MR-250F

6.7V
(VR24)

50mA
(VR32d)

 

 放電抵抗R42,R43,R44は3つの抵抗を組み合わせています。 各抵抗値は下表のようにしています。 なお、R43,R44はジャンパーピンで接続/未接続を選択できるようにしています。 これらの抵抗は2Wクラスを使用するのが望ましいですが、今回は手持ちの関係で1/2W抵抗を組合わせて使用しています。

回路

電池種類

型式

R42

R43

R44

リチウムイオン
電池

LC10440

100Ω

50Ω(100Ω並列)

20Ω(10Ω抵抗直列)

リチウムイオン
電池

LC10440

100Ω

50Ω(100Ω並列)

20Ω(10Ω抵抗直列)

リチウムイオン
電池

F09 or F12

100Ω

50Ω(100Ω並列)

20Ω(10Ω抵抗直列)

NiMH電池

MR-250F

100Ω

100Ω
(未接続)

100Ω
(未接続)

 

 PICマイコンはセラミック振動子を使用していまのでクロックが安定していませんし精度も水晶振動子に比べて相当悪いです。 また、時間はプログラムのループを使って作っていますが、正確なステップ数をカウントしていませんのでソフト的な時間も正確ではありません。 しかし、今回の用途ではこの程度で十分です。 ただし、4回路同時に独立して動作していますので、待機中の黄色LED点滅(PICマイコン動作確認用)が最初は同時に変化していたものは、そのうちバラバラに点滅するようになります。 製作後の反省ですが、4回路にするならば20MHz水晶発振器を使用してPICマイコンを外部クロック入力とすべきでした。 そうすればGPIOをもう1点追加でき、時間選択を現在の4通りから8通りにできました。

 LED30,LED31,LED32,LED33は用途を下表に示します。

回路

用途

動作

LED30

緑色

電源投入表示

電源オン時、常時点灯

LED31

黄色

PICマイコン動作表示

電源投入時点滅
充放電中点滅
充放電終了後点滅

LED32

緑色

充電中表示

充電中点灯

LED33

赤色

放電中表示

放電中点灯

 

2.2 PICマイコン 

 PICマイコンのプログラムは「いっこいっこ充放電繰り返し器」を改修して使用しています。 動作シーケンスを下表に記載します。
なお、本バージョンでは放電のみで終了する機能を追加しています。

STEP

動  作

STEP1

電源投入直後、 LED31:0.3s点灯、0.3s消灯の繰り返し。

STEP2

スタートスイッチ(SW31)が押されるまでSTEP1を繰り返す。

スタートスイッチ(SW31)が押された後には、LED1は1s毎に点滅を繰り返す。 (シーケンスプログラム動作確認のため)

STEP3

スタートスイッチ(SW31)が押された直後に放電モードに移行。

LED1はシーケンスプログラム動作確認のため、シーケンス終了まで1s点灯、1s消灯を繰り返す。

STEP4

電池電圧が放電終了電圧設定に到達していない場合は放電を継続する。 放電終了電圧設定以下になった場合、追加放電モードに移行する。

STEP5

追加放電時間T1の期間放電状態を継続し、その後放電をオフする。

STEP6

終了電圧判定待ち時間T2何もせず待ち、その後、終了電圧判定する。

STEP7

終了電圧に到達していない場合は、再度放電モード(STEP3)に移行する。

終了電圧に到達している場合、次のSTEPステップに移行する。

STEP8

EEPROMアドレス0番地bit7=1のときStep11へ移行する。

EEPROMアドレス0番地bit7=1のときSTEP9へ移行する。

STEP9

充電時間T3の期間、充電を継続する。 充電時間終了後、充電をオフする。

STEP10

充放電サイクル終了していない場合、放電開始待ち時間T3待って、放電モード(STEP3)に移行する。

充放電サイクル終了した場合、次のステップに移行する。

STEP11

全ての電池の充放電サイクルが終了した場合、下記掲載の終了表示設定に準じた動作をする。

 

 PICマイコンのEEPROMの設定で、シーケンス動作の個別設定ができます。 表中のアドレス、及び、括弧内数値は16進数です。

アドレス

SW32
-2

SW3
2-1

内  容

回路

回路

回路

回路

00

OFF

OFF

bit7=1 : 放電のみ。
bit7=0 : 放電→充電サイクル
bit0〜6 : 充放電サイクル回数 0〜127

01

01

01

01

01

追加放電時間T1 0〜255

02

02

02

02

02

終了電圧判定待ち時間T2 0〜255

00

00

00

00

03

充電時間(秒) 上位8ビット 0〜65535 

1C

1C

1E

5E

04

充電時間(秒) 下位8ビット

20

20

97

EC

05

放電開始待ち時間T3 0〜255

05

05

05

05

06

OFF

ON

充放電サイクル回数 0〜255

01

01

01

01

07

追加放電時間T1 0〜255

02

02

02

02

08

終了電圧判定待ち時間T2 0〜255

00

00

00

00

09

充電時間 上位8ビット 0〜65535

23

23

23

38

0A

充電時間 下位8ビット

28

28

28

40

0B

放電開始待ち時間T3 0〜255

05

05

05

05

0C

ON

OFF

充放電サイクル回数 0〜255

01

01

01

01

0D

追加放電時間T1 0〜255

02

02

02

02

0E

終了電圧判定待ち時間T2 0〜255

00

00

00

00

0F

充電時間(秒) 上位8ビット 0〜65535

2A

2A

3D

E1

10

充電時間(秒) 下位8ビット 

30

30

2E

00

11

放電開始待ち時間T3 0〜255

05

05

05

05

12

ON

ON

充放電サイクル回数 0〜255

01

01

01

01

13

追加放電時間T1 0〜255

02

02

02

02

14

終了電圧判定待ち時間T2 0〜255

00

00

00

00

15

充電時間(秒) 上位8ビット 0〜65535

46

46

46

1C

16

充電時間(秒) 下位8ビット

50

50

50

20

17

放電開始待ち時間T3 0〜255

05

05

05

05

FF

終了表示設定

bit7=0の場合 LED31消灯

bit7=1の場合 LED31点滅(bit6設定による。)

 bit6=0  LED31 0.2s点灯、1.8s消灯繰り返し

 bit6=1  LED31 1.8s点灯、0.2s消灯繰り返し

C0

C0

C0

C0

 申し訳ありませんが、今回のプログラムも非公開とします。 ただし、書込みサービス対応としますのでここを参照願います。

 PICマイコンを使用するのが面倒でしたら、充放電の信号をご自分で作成される事もできます。 PICマイコンの出力は充電信号、放電信号ともに5Vで動作、0Vで停止となります。 (PICマイコン相当のLow:シンク電流/High:ソース電流を流せる信号(8mA以上流すことができでが十分)が必要です。)

 

2.3 製作例

 上記仕様で製作したあれもこれも充放電器本体を下記に掲載します。

 同一の充放電回路が左から回路A,B,C,Dの順番で4回路並んでいます。 さらにその右に共通回路を実装しています。

 各回路の上側にある水色の多回転ポテンショメータが充電電流を調整するVR32です。 基板右下にある4個の水色の多回転ポテンショメータは放電終了電圧 を調整するVR21、VR22,VR23,VR28です。

 IC33(LT3080ET)は基板外に実装しますので、引出用端子をリード線で作っています。 基板上部に4個並列になっている部分(4ヶ所)がその部分です。

【 あれもこれも充放電器本体基板1 】

 

【 あれもこれも充放電器本体基板2 】

 

【 あれもこれも充放電器本体基板(部品面) 】

 

【 IC33(LT3080ET)放熱板取り付け状態 】

 

【 あれもこれも充放電器本体 部品実装状況) 】

 

VR調整時状態IC33(LT3080ET)は基板外に実装しますので、引出用端子をリード線で作っています。 基板上部に4個並列になっている部分(4ヶ所)がその部分です。

上側のプレートには左から下記の電池ボックスを実装しています。

回路A : LT10440用単四電池ボックス
回路B : LT10440用単四電池ボックス
回路C : 携帯リチウムイオン電池用ボックス(自作)
回路D : 006P用電池ボックス

【 あれもこれも充放電器本体 VR調整時状態 】

 

あれもこれも充放電器本体だけでは、リチウムイオン電池のフル充電は厳禁です。 充電時間を調整して50%充電での長期保存用充電のみです。

【 あれもこれも充放電器本体 電池実装状態1 】

 

【 あれもこれも充放電器本体 正面側外観 】

 

【 あれもこれも充放電器本体 背面側外観 】

 

3.あれもこれも充放電器 リチウムイオン電池用保護回路基板

3.1 回路図

 リチウムイオン電池用保護回路として、電池電圧と電池温度を検出します。 この回路は「あれもこれも充放電器」の電池接続部とリチウムイオン電池の間に接続します。 また、この回路の電源も「あれもこれも充放電器」から取ります。 今回製作したリチウムイオン電池用保護回路の回路図を下記に示します。

 

上図をクリックすると原寸大の回路図をダウンロードできます。

【 リチウムイオン電池用保護回路 】

 

  本基板は保護回路を2組設けています。 電圧検出は本来は過電圧検出ですが、充放電特性から推測すると電圧と充電時間のいずれかが所定値に達することで充電終了判定としているようですので、過電圧検出=放電終了判定としています。

 過電圧設定(充電終了電圧)、温度設定を下表に掲載します。 なお、サーミスタは秋月電子通商で販売している「NXFT15XH103FA2B」(10kΩ品)を前提にした調整となっています。

回路

電池種類

過電圧設定
(充電終了電圧)

温度設定

リチウムイオン電池

4.25V

4.44V(50℃相当)

リチウムイオン電池

4.25V

4.44V(50℃相当)

   スイッチSW81は、電源投入時や浮遊電圧で異常を誤検出した場合にリセットする場合に使用します。 特に電圧検出部分(電池電圧)はフローティングでかつコンデンサで接地しているので、入力端子からのリーク電流(バイアス電流)で電位を有して誤検知に至るようです。 これを防ぐために未使用回路側の電池接続端子に100kΩ〜1MΩの抵抗を接続しておくことが推奨されます。 なお、この抵抗は電池の放電抵抗になりますので標準では未接続としています。

3.2 製作例

緑色の端子はサーミスタ接続用です。

【 保護回路基板外観1 】

 

【 保護回路基板外観2 】

 

【 保護回路基板外観3 】

 

【 保護回路基板外観(ハンダ面) 】

 

4. 動作例

 「あれもこれも充放電器」と「リチウムイオン電池用保護回路基板」を組合わせて使用した事例の写真を下記に示します。

 

 携帯用リチウムイオン電池→「リチウムイオン電池用保護回路基板」→「あれもこれも充放電器」となるように接続しています。

 携帯用リチウムイオン電池の表面にサーミスタをテープで貼り付けています。

【 携帯用リチウムイオン電池充放電時外観 】

 

 携帯用リチウムイオン電池F12を一旦充電した後、放電→充電のサイクルを行った際の変化をグラフ化した結果です。

【 携帯用リチウムイオン電池充放電時データ 】

 


余談 リチウムイオン電池外装取り外し

 

 本製作例の動作確認のためにリチウムイオン電池LT10440を電池ボックスに入れて動作確認し、その後、この電池を取り外そうとしましたがなかなか取り外せませんでした。 このため、隙間のある+極側に精密ドライバ(マイナス)を差し込んで取りり出そうとした際に、突然プチッという音とともにドライバ先端が接触していた部分が明るくなりました。 ドライバの先端が+極側を貫通して−極側と短絡したようです。 その後、電池電圧を確認すると0Vになっています。 どうもこの電池を破損したようです。 このまま廃棄するのももったいないので外装を剥いでみることにしました。

注意 リチウムイオン電池を解体するのは発煙発火事故を生じるので絶対に真似をしないでください。

 

【 LT10440外装を剥いだ状態 】

 


突起部下側の白っぽい部分が短絡して赤く見えた部分です。

【 +極側拡大外観 】

 

【 −極側拡大外観 】

 

【 +極側基板開封外観 】

 

 電池のマイナス側に安全回路が実装されているようです。 この回路は不明ですが、出力遮断機能があるようです。  「あれもこれも充放電器」の動作確認時に過電圧設定を4.5Vにして充電を行い、このときの電池電圧を測定していると約4.3Vでなぜか突然充電電流が0mAとなっていました。 どうもこの回路でリチウムイオン電池の監視をして約4.3Vで過電圧検出してオフさせているようです。 今回、開封後にこの基板を介さずに電池セル単体の電圧を測定すると約3.8Vありました。 どうもこの基板で遮断されているようです。

 なお、開封時写真で基板と電池セルの接続板が変色していますが、これは錆びでした。 接続板の表面処理不具合なのか、フラックスor基板洗浄が悪かったのか不明ですが、ちょっと信じられない品質です。 


プログラム書き込みサービス

 本ページのPICマイコンのソフトは非公開とします。 但し、本ページで紹介しましたPICマイコンの書き込みサービス は行います。 詳細はプログラム書き込みサービスのページを参照願います。


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