Memorandumの小部屋
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電池ボックス電子工作(その7)
いつどこ充電器
1.背景
MP3プレーヤとしてiRiverのiFP−799(1GB)を所有していました。 メモリも当時最多1GB程度でボイスレコーダにFMチューナも搭載されており結構満足していました。 新幹線で心地よく睡眠をとるためにダイソーで購入したクラシック名曲集10枚や他の手持ちCDを格納して重宝していました。
【 iFP−799(1GB) 】
その後、21枚組のCD集を購入しました。 このCD集だけならば、iFP−799(1GB)には半分程度は格納できるかもしれませんが、それでは大切な新幹線での睡眠がとれなくなります。 そこで、新しいMP3プレイヤーを購入することにしました。
やはり、のぞみで車内放送を聞くためのFMチューナ、大切な会話の聞き忘れを防ぐためのボイスレコーダは必須です。 いろいろ選択した結果、mpioのFY800を購入しました。 知らなかったのですが、このFY800はどこなのメーカ品の似非品だったのですね。(オリジナルの方のメーカが大嫌いなので、その事を知りませんでした。) この機種の一番の決め手は内蔵2GB+SDメモリ(2GB)のメモリ構成でした。
【 FY800 】
購入後気付いたのがバッテリです。 今までは、デジカメのCOOLPIX990では容量不足使用できなくなった単三乾電池が、MP3プレイヤー用としてはまだまだ 十分使用できますので、これをiFP−799用単三乾電池として使用していました。 ところが今回購入したFY800は内蔵充電電池のため、デジカメの使い残しの単三乾電池の用途がなく なりました。 また、FY800の充電には5V電源とUSBポートが必要です。
今回、デジカメ使い残し単三乾電池を使ってFY800を充電する充電器を購入、及び、製作しましたので、以下に紹介します。
FY800はUSBポートを利用して充電しますので、電源電圧として4.75〜5.25Vを確保できればよいようです。 ついでにUSBポートを使用して充電する機器として携帯電話もありますので、電源電圧は5.2V程度を目標にした方が良さそうです。 これで、どこでも、いつもでMP3プレイヤーや携帯電話の充電がデジカメ使い残し単三乾電池で、できそうです。
2.携帯電話用電池式充電器の利用(1)
MP3プレーヤの充電器として、ディスカウントショップでたまたま目に付いた単三乾電池2本を使用した携帯電話用充電器AIR’S JAPAN製BJ−F1を買いました。 但し、コネクタは携帯電話用ですのでUSB用のコネクタを追加しないといけません。 この後、ヤマダ電機で類似品を調べると、携帯にもUSBポートにも対応している充電器はいくらでも有ることを知って、安物買いをしてしまったと反省です。
早速、USBポート追加のために充電器を分解です。 基板を見ると、DCDCコンバータ回路はディスクリート部品で構成されているようです。
【 充電器基板 部品面 】
【 充電器基板 ハンダ面 】
この充電器には電源スイッチが付いていません。 どうも、携帯電話に接続することで電源オンになるようです。 と、いうことはUSBポートを追加しただけでは駄目なようです。 部品面のGランドとVO−ランドを短絡することでDCDCコンバータが動作する のを確認し、今回はこのランド間を短絡し、別途、電源スイッチを追加しました。 また、電源スイッチオフ忘れために電源オンLEDを追加しました。
【 BJ−F1 改造接続図 】
実際の改造の状況を下図に写真を掲載します。 電源スイッチは秋月電子通商で購入した超小型スライドスイッチ「IS−1250」が大きさびったりでした。 M3皿ネジとナットで超小型スライドスイッチを 押さえて固定しています。 LEDも秋月電子通商で入手した3mm超高輝度LED「OSHR3131P」を0.5mA以下で駆動しています。
USB Aコネクタのメス側は、単三乾電池の中央の隙間を使って後ろ側に引き出しています。
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【 スイッチ、LED取付 】 | 【 USBメス側コネクタ取付 】 |
このような改造を行って、FY800を充電している状態、及び、出力測定結果を下図に掲載します。 この結果より出力電流は300mA程度であると推測されます。 効率は70%以上と、まあまあの結果です。
【 充電動作状況 】 | 【 出力特性 】 |
また、100〜400mA出力時の出力電圧リップル測定結果を下記に掲載します。 このようにリップルが相当大きい出力波形でした。 なお、このリップルは用途が充電器なので特に問題はないかと思います。
【 リップル電圧波形 】
3. 携帯電話用緊急電源の利用(2)
BJ−F1を買った際、単三乾電池1本の携帯電話用緊急電源AIR’S JAPAN製SJ−FOMA2Bが目に止まりました。 いつもの悪い癖で、実際に使用するのではなく、中身(回路)と特性を知るためにこれを衝動買いです。 使用部品はスイッチング電源用IC( 形式不明)+NチャンネルFET(チップ部品、形式不明)を使用したDCDCコンバータとなっていました。
【 SJ−FOMA2B 】 | 【 充電器外観 】 | 【 内部外観 】 |
BJ−F1と同様に出力測定を行いました。 下記のように効率はそれなりに悪くありませんが、出力電流は大してとれないことが分かります。 まともに電圧を維持できるのは出力電流数10mAという結果でした。 また、とても注意しないといけないのは単三乾電池の消費電流がとても大きいということです。 単三乾電池一本で5Vを出力しますので、単三乾電池から取り出される電流は、効率75%として出力電流の4倍以上となります。 つまり、100mAの出力を得ようとすると400mA以上の乾電池の電流となります。(実測値416mA)
【 出力特性 】
なお、出力特性測定中に本品を破損してしまいました。 どうもスイッチング用のMOS−FETを熱破壊したようです。 代わりのFETを接続することでDCDCコンバータの機能は復活しましたが、最低起動電圧が2V程度となってしまいました。 適したFETを探せば修理可能だと思いますが、現状はそもまま放置となって います。 スイッチング用ICはまだ正常動作しているようですので、別のMOS−FETを入手して再修理の予定です。
3. 「いつどこ充電器(その1)」の製作
上記までは市販品の評価でしたが、ここは電気電子工作の部屋です。 当然自作にトライします。 いつでも、どこでも(新幹線移動中でも)MP3プレーヤと携帯電話を充電できる「いつどこ充電器」を製作します。
上記評価をしていて思い出したのが、いつか何かに使用できるであろうと秋月電子通商で購入していた「MAX879」です。 抵抗、コンデンサ、インダクタンスの5個の追加部品でDCDCコンバータを作ることができます。
回路試作を経て、最終的に下記の回路で製作しました。 収納するケースは「秋月電子通商の電池ボックス 単3×4本用(フタ付プラスチック・スイッチ付) [SBH-341-AS]」です。
【 いつどこ充電器(その1) 回路図 】
C4,L2,C5は基板に空きスペースがありましたので追加した回路です。 特に必要ではありませんが、スペース活用ということで追加しています。
L2の22μHは、もともとL2の10μH用のボビンを流用して巻き直して22μHになるようにしたものです。 材料の物性値が不明のため磁気設計できていません。 実電流で22μHとなるかどうかは不明です。
空きスペースがあるということで出力電圧調整できるようにVR1を設けていますが、VR1のかわりの33kΩの固定抵抗で、ほぼ5.2V出力となります。
MAX879はICソケットにする必要はありません。 と、いいたいところですが、今回の試験で合計3個ダメにしました。 こんなに壊したのは久々です。 ○眼のため逆接続に気付かなかったこともありますが、このICは出力電力を取り出しても結構頑張ってくれるため、知らず知らずのうちに熱破壊させてしまったようです。 一度はチップがハンダ付け済み基板から外れてしまいました。 つまり200℃近くに温度上昇していたようです。 ここまで持つのは立派といえ立派ですが、熱保護回路くらい内蔵して欲しかったです。 また、秋月電子通商の基板自体もただ単にパターンで接続しているだけであり、ICの特質を考えた基板になっていません。 素人用といえ、この基板は酷いなと思います。
データシートでは電流制限抵抗R1は0Ω(短絡)となっています。 しかし、上記のようなことも有り、R1=220Ωを追加しています。 その分、出力特性が悪くなりますが、破損するよりは良いとの判断で追加しました。
今回製作した「いつどこ充電器(その1)」の写真を以下に掲載します。
【 いつどこ充電器(その1) DCDCコンバータ基板部 】
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【 いつどこ充電器(その1) 内部外観 】
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【 いつどこ充電器(その1) コネクタ部外観 】
【 いつどこ充電器(その1) 完成品外観 】
今回製作した「いつどこ充電器(その1)」の出力特性を測定した結果を下記に記載します。 電流制限抵抗R1有無での違いもわかるようにしておりますので、参考にして下さい。
電流制限抵抗R1=0Ω(短絡) | 電流制限抵抗R1=220Ω | |
電 池 電 圧 3 V 一 定 出 力 電 流 特 性 |
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出 力 電 流 入 力 100 mA 一 定 電 池 電 圧 特 性 |
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出 力 電 流 入 力 200 mA 一 定 電 池 電 圧 特 性 |
リップル波形測定結果を以下に示します。 データ採取中に出力電流100mA付近で調整困難な場合がありました。 下記波形を見る限り制御状態ががらりと変化しているようです。 インダクタンスL1の影響なのか、試験用電源の出力インピーダンスの影響なのか不明ですが、あまり好ましい状態ではないと思われます。 (データシートをまともに読んでいません。 データシートに何か記載されているかもしれません。)
【 いつどこ充電器(その1) リップル波形 】
秋月電子通商のMAX879の基板は放熱が全く考慮されていません。 このため、どうにか放熱できないかと思っていたところ、秋月電子通商から「クールスタッフ(放熱フィルム) 40x40mm [P-1916]」が販売されていることに気づき、これを貼り付けることにしました。
【 クールスタッフ(放熱フィルム) 40x40mm 】
クールスタッフ(放熱フィルム)を貼り付けた状態を下記写真に示します。
【 クールスタッフ(放熱フィルム)を貼り付け例 】
4. 「いつどこ充電器(その2)」の製作
「いつどこ充電器(その1)」では単三乾電池4本のケースを使用しましたがケースがあまりにも大きすぎます。 そこで、単三乾電池2本のケース「秋月電子通商の電池ボックス 単3×2本用(フタ付プラスチック・スイッチ付) [SBH-321-AS]」に組み込んでみました。
MAX879はSOPパッケージで基板搭載されていますので、この基板を利用して回路を組み込むことにしました。 このトライで問題になるのがインダクタンス22μHと100μFコンデンサです。
100μFコンデンサは、これまた秋月電子通商が取り扱っている「チップ積層セラミックコンデンサ 100μF 6.3V[3225](10個入)
[GRM32EF10J107Z]」(800円)を入手して使用することにしました。 M3870Dで実測したところ84μFとなっていました。 この程度だと問題無く使用できます。 しかし、このような部品を入手できる時代になったの
には感慨深いものがあります。
なお、その後、チップ積層セラミックコンデンサ 100μF
6.3Vとして3216サイズで10個300円でも発売されています。 もし、同じものを製作されるならば、こちらを使用されることをお奨めします。
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【 100μFコンデンサ 】 | 【 実測値 】 |
22μHのインダクタンスは、たまたま大阪のデジットを訪問する機会がありましたので、ここで物色しました。 店頭のラベルで22μH品ということで下記の3種類入手しました。 ちょっと巻き数が少ないなと思いつつ購入したのですが、持ち帰り後実測すると中央のPK0406は確かに22μHでしたが、それ以外の2品は10μHしかありませんでした。 店頭ラベルの見間違いかと思い、再度デジットを訪問した際に確認したところ、やはり店頭ラベル22μHと判断できます。 どうなっているのかな? 直流の影響、測定周波数の影響?よく分かりません。
実装を考えれば、STB-240が使えそうです。 データシートを見るとSBT-0240は40μH(1kHz)定格500mAとのことですが、感覚的には力不足(コア体積小さい)に思えます。 インダクタンスは実測を信じて、とりあえず2個直列で使用することにしました。 (後で調べたところ、PK0406は800mA品のようですので、こちらを使用することを検討すればと反省中です。 やはり、ヤマカンではなく、それなりのデータシート確認が必要ですね。)
左 : SBコイル SBT-0240-TF |
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【 22μH 候補品 】 | 【 実測値 】 |
以上の部品選定過程を経て、下記回路で製作しました。 L11,L12は上記のSBT-0240-TFを2個直列に接続しています。
【 「いつどこ充電器(その2)」回路図 】
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写真撮影後に気付きましたが、何度も組み替えしましたので結構汚れています。 |
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【 基板部品面 】 | 【 部品ハンダ面 】 |
基板とインダクタンスは上記のように隙間に入れています。
【 「いつどこ充電器(その2)」 部品組み込み状態 】
【 「いつどこ充電器(その2)」完成時 内部外観 】
「いつどこ充電器(その2)」にも、小さいですがクールスタッフ(放熱フィルム)を貼り付けました。
【 「いつどこ充電器(その2)」最終内部外観 】
【 「いつどこ充電器(その2)」最終外観 】
今回製作した「いつどこ充電器(その2)」の出力特性を測定した結果を下記に記載します。 こちらも電流制限抵抗R1=220Ωを追加していますので「いつどこ充電器(その1)」
と同じになるのかなと思っていましたが、「いつどこ充電器(その2)」の方が効率、出力能力などの性能が劣っています。 やはりインダクタンスに問題がありそうです。 それでも使用できないわけではありませんので、当面はこれで使用することにしました。 そのうち、インダクタンスを
再検討してみようかと思っています。
なお、波形観測はしませんでしたが、やはり100mA付近での調整で状態遷移点があるような状態でした。
電流制限抵抗R1=220Ω | |
電 池 電 圧 3 V 一 定 出 力 電 流 特 性 |
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出 力 電 流 入 力 100 mA 一 定 電 池 電 圧 特 性 |
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出 力 電 流 入 力 200 mA 一 定 電 池 電 圧 特 性 |
5.その他
今回、USBシリーズAコネクタのメス側をいくつか使用していますが、これらの部品は動作しなくなったHUBから部品取りしています。 今回取り外したHUB部品の残りが下記画像です。 過電流防止のポリスイッチなども使用できそうです。
動かなくなったからといって廃棄するのではなく、このように部品取り用に使用できますので、ますます別名ゴミが増えていって困っています。
【 部品取りと化したHUB 】
最後にお詫びです。
残念ながら、本ページを公開した時点では、今回紹介したMX879は秋月電子通商で販売されなくなっていました。 本ページのプロジェクト開始時は入手できていましたが、2007年11月上旬から購入数量制限され、その後販売終了したようです。 よって、「いつどこ充電器(その1)」「いつどこ充電器(その2)」を再現しようとしても不可能かもしれませんが、ご容赦願います。
End of This Page.