Memorandumの小部屋
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パラボラの電源が切れる!!
いつでも電源の製作。
1.背景
みなさん、デジタル放送用の分配器は是非全端子電流通過型を買いましょう。 1端子電流通過型を買うと、下記のような面倒にあいます。
TV放送も本格的にデジタル化されてきており、プラズマTVやHDDレコーダにもデジタルチューナが搭載されてきています。 衛星放送もBSデジタルに110°CSとなってきていますが、アンテナの関係で110°CSだけは見ることができませんでした。 TVのリモコンで110°CSを選ぶと「アンテナに異常」と表示されるのは精神衛生上よくありません。 これを解消するために110°CSも受信できるようにしなければいけません。 と、いうことでデジタルBS・110°CS用の3本目のパラボラアンテナ(日本アンテナ製のCBS−45RST)をヤマダ電機で購入して取り付けました。 1本目のパラボラアンテナはアナログBS用、2本目はスカパー用です。 さすがに3本目となる今回はちょっとみっともない感じがして、目立たないように1本目の後ろ側に取りつけました。 が、やはりベランダにパラボラが3本あるのがよく見えます。 ご近所さんに笑われているような。。。。。 なお、2分配器は手持ちの1端子電流通過型のDXアンテナ製SD−772を使用しました。 実は、後になって気付いたのですが、これが今回の深み(?)に入る原因でした。 |
機器のセットアップが完了し、プラズマTVをオンしてスカパー!110チャンネルを選択すると下記映像が難なく映りました。 デジタル放送と言ってもSD画質なのでハイビジョン画質を期待してはだめだと、よく分かりました。 スカイパーフェクトTVと画質は代わり映えがえしません。
【 スカパー!110受信画像 】
その後、HDDレコーダ側でも正常に受信できることを確認して、セットアップを完了しました。 しかし、その日の夕方のことです、プラズマTVでデジタルBSを見ようとしたところ、下記のメッセージが出ていました。いる
【 エラーメッセージ 】
HDDレコーダの電源をオンするとエラーメッセージが消えて正常に受信できるようになります。 どうもHDDレコーダの電源が切れると、受信できなくなるようです。 そこでHDDレコーダの取扱説明書を読むとアンテナへの電源供給は「切り」と「連動」しかありません。 プラズマTVも同様に「切り」と「連動」しかありません。 そうなると、常時HDDレコーダをオンしておくか、別途、アンテナ用の電源を準備するしかありません。
と、思ったら間違いです。 受信機側の電源設定を「連動」にして、分配器を1端子電流通過型から全端子電流通過型に変更すればこの問題は解決できます。
残念ながらアンテナ部品箱をひっくり返しても全端子電流通過型は見つかりませんでしたが、1端子電流通過型の3分配器:日本アンテナ製CS−3Dが見つかりました。 これ、結構高い値段だったような気がします。 何せ、いろいろ買いすぎて、何故余っていたかすら覚えていません。。。。
さて、CS−3Dを見つけると頭の中に下記の構成が思い浮かびました。 アンテナ用常時供給電源「いつでも電源」の製作を、さあ始めましょう。
【 「いつでも電源」供給構成図 】
2. 「いつでも電源」の製作
「いつでも電源」の製作は、電源とF接栓(F型コネクタ)だけでも済むのではないかと思われますが、アンテナラインへの電源供給ということで、少しだけ原理原則に則って製作してみます。 但し、細かい話をし出すと、今回の製作に使用する部品の入手が困難になりますので、少々のことは無視して進めます。
BSデジタル、110°CSパラボラアンテナは、放送衛星からの11.7〜12.75GHzの電波を1022〜2072MHzの電波に変換してコンバータ出力として出力します。 このコンバータ出力を同軸ケーブルで受信機に伝送します。 受信機が複数ある場合は、コンバータ出力を分配する分配器をつかって1つのコンバータ出力を複数のコンバータ出力に分割します。 分割されたコンバータ出力は、分割数に反比例してエネルギーが小さくなりますので、ブースタを使って信号を増幅しておきます。
このコンバータ出力を伝送する同軸ケーブルにアンテナ用DC電源を重畳します。 DC電源は直流であり、コンバータ出力は交流(高周波)という大きな違いがあり、この違いを使ってDC電源を重畳したり分離したりします。 今回は重畳側の回路を組み込んでおこうということになります。
といってもLCRから成る簡単な回路です。 回路図を下記に示します。 なお、今回の回路は余っていたF型ワンタッチプラグに組み込んでいます。 2度と同じケースを入手することはできないのが残念です。
【 「いつでも電源」回路図 】
アンテナ側(回路図右側)から「いつでも電源」側を見たときには、伝送路の特性インピーダンス75Ω(抵抗値ではありません。)に見えて電源側のインピーダンスの影響を受けないようにしなければいけません。 また、DC電源側(回路図左側)から見ると低抵抗でアンテナ側に電源を供給できなければいけません。 これを回路図で少し説明してみます。
コイルL1は直流抵抗は小さく(≒0Ω)、高周波ではインピーダンス(=2×π×f×L1[H])が大きくなります。 つまり、直流は通過できますが、周波数が高いとインピーダンスが大きくなり、通過しずらくなります。
コンデンサC1は直流では抵抗値が非常に大きい(断線しているのと同じ)、高周波ではインピーダンス(=1/(2×π×f×C1[F}))がとても小さくなります。
抵抗R1は、周波数に関係なく、直流でも高周波でも75Ωのままです。
それぞれの部品は上記の特徴を有しています。 この部品を回路図のように組み合わせるとどうなるのでしょうか。 めずらしく講釈モードに突入です。 読むのが面倒な方は下記をパスして下さい。
講釈モード (読むのが面倒ならばパスして下さい。) まず、DC電源側からみていきます。 C1は断線状態と同じで、L1は0Ω相当なので、DC電源の損失が無い状態でアンテナ側にDC電源を供給できます。
【 DC電源供給側から見た「いつでも源源」 】
アンテナ側から「いつでも電源」を見るとどうなるでしょうか。 アンテナ側には1GHz以上の周波数の信号があります。 この周波数になるとC1≒0Ω相当なので赤い太線のように抵抗R1(=75Ω)が接続されているように見えます。
【 アンテナ側から見た「いつでも電源」 】
上記は基本的な考え方です。 実際には周波数が高くなると抵抗は抵抗でなくなり、コンデンサはコンデンサでなくなり、インダクタンスはインダクタンスでなくなります。 コンデンサがインダクタンス・抵抗に、インダクタンスがコンデンサ・抵抗に、抵抗がコンデンサやインダクタンスに化けてしまいます。 また、取り付ける位置によっても見え方が変わります。 このように、使用する部品、実装に関して、いろいろ複雑になり、面倒な検証を行って初めてまともな回路になります。
おっと、「何故75Ωにこだわるのか」の説明ができていませんでした。
このように書いていますが、今回の用途ではそれほど整合をとることに注意を要する必要はない思うのが正直なところです。 とりあえず、原理原則だけを押さえておくという前提で紹介しております。 |
今回の製作に使用する部品類を下記写真に示します。
【 「いつでも電源」使用部品 】
DC電源はアンテナやブースターの要求する電圧、電流に合致するものを選定して下さい。 当方は手持ちにあった秋月電子通商で購入したNP12-1S1508(15VDC、0.8A)を使用しています。
【 「いつでも電源」 LCR部品 】
抵抗、コンデンサはできればチップ部品、なければ普通のリード線タイプでも構いません。 上記写真のチップ部品は秋月電子通商の店頭で相当前に購入したものです。 通信販売はしていないようです。 また、現在、店頭販売しているのかも不明です。
コイルL1は空心コイルとし、自分で製作します。 直径0.5mmのエナメル線をコイルバネ状にして作ります。 空心コイルの製作方法はいろいろありますが、当方は、下図のようにエナメル線をドリルピットにまきつけて空心コイルを製作しています。 ドリルピットの太さはそれなりの揃っていますので、いろいろな空心コイルを製作するのに便利です。
【 「いつでも電源」 コイル製作例 】
またまた、おっと、ですが空心コイルは適当に製作して頂いて結構です。 正直な話、空心コイルで目的の周波数において本来期待するインダクタンス性能を示すか全く自信がありません。 ここはコイルを設けたという気持ちの問題です。 えいやーです。 一応1A程度の電流を流すことと、ケースとなるF型ワンタッチプラグの中に収納できるかということに注意して製作してみて下さい。 当方は5mmのドリルピットに9回巻き付けて製作しました。 できた空心コイルの長さは8mm程度でした。 小さいことに拘らず、えいやーーーーーでつくりましょう。 ちなみに、計算値で約0.25μH、デジタルインダクタンスメータキットでの実測で0.3μHでした。
次の関門がケースとなるF型ワンタッチプラグの中にDCジャックを格納できるかということです。 今回使用したF型ワンタッチプラグは結構大きい方だと思います。 それでもDCジャックをF型ワンタッチプラグに格納することは難しそうです。
実は今回の製作で一番手間がかかったのがこの部分です。 結局、ナット部分は使用しない、DCジャックのネジ部分の上下を削って、DCジャック部分の高さを低くしてF型ワンタッチプラグ内に収納することができました。
【 DCジャックとF型ワンタッチプラグ 】
R1,C1にチップ部品が入手できなかった場合、リード線タイプの部品を使用します。 このときの製作例を下図に示します。 このようにリード線が最短になるようにして実装して下さい。
【 リード線部品使用の実装例 】
R1,C1にチップ部品を使用できる場合は、下図のように積み木細工のように組立ていきます。
【 チップ部品使用の実装例 】
R1,C1実装後、DCジャックとL1を取り付けます。 その状態を下図に示します。 DCジャックの上側を削った様子が見えるでしょうか。 なお、L1とアースが接触するとDC電源出力を短絡することになりますでので、L1の絶縁をしっかりと行って下さい。 下図にはありませんが、アース側にビニルテープを巻くなどして絶縁層を設けておきます。
【 「いつでも電源」 部品実装状態 】
組立が完了してF型ワンタッチプラグのケースを取り付けた状態です。 ケースの切り欠きに失敗していますが、見えるところに設置するわけではないので、気にしない、気にしない。
【 「いつでも電源」 外観 】
ACアダプタを接続した状態です。 思った以上にコンパクトにできました。 F型ワンタッチプラグって、意外とケースとして使用できるのですね。
【 「いつでも電源」 ACアダプタ接続状態 】
さあ、接続です。 TVセット裏面に回り込んで接続、そして電源オンです。 特に問題なく電源供給できたようです。 これでいつでもBSデジタルに110°CSを見ることができます。
【 「いつでも電源」 接続状態 】
いつもならば、ここでお終いなのですが。。。
おまけ
クラニシ SWRアナライザ BR200で特性調査
今年、とうとう買っちゃいました。 そりゃ、一家に1台ネットワークアナライザであるべきですが、お遊びで出せる金額には限りがあります。 とりあえずSWRアナライザで我慢です。 でも、それなりに使えます。 いや、例え中古で安く買ったといえども「ン蔓延ン遷延」もしましたので使わないともったいないです。 あーーーー一家に1台ネットワークアナライザ。。。。。
【 DCジャック短絡時の測定状況 】
このBR200は1.8〜170MHzの周波数レンジです。 キャリブレーションも必要なくインピーダンス|Z|及びVSWRを測定できます。(あーーーインピーダンスZ(=R+jX)を測定したい。) でも、「いつでも電源」のターゲットとする周波数は1000MHz以上ですから、この測定で本来知りたい特性を調べるわけではありません。 あくまでBR200を使ったという気持ちの問題です。
測定ポートに「いつでも電源」を接続します。 接続の際にはMーF変換コネクタを使います。 この変換コネクタ自体で不整合を生じていますが、無視無視。 数字を読みましょう。 また、L1の効果を見るためにDCジャック側に短絡ピンを接続した状態でも測定してみました。
測定結果を下図に記載します。 青色がDCジャック短絡時、ピンク色がDCジャック開放時です。 周波数の低いところではL1のインピーダンスが小さいのでDCジャック側の影響を受けています。 周波数が高くなるにつれてR1=75Ωに近づいています。(テスタの抵抗測定のようにぴったり75Ωを期待するのは無理ですね。) また、50MHzを超えるとDCジャックの影響が小さくなるようです。 なんやかや見ていくとTVのVHF帯域以上では使用可能な感じです。
ちなみに、この結果からL1は0.39μH程度のようです。
【 「いつでも電源」インピーダンス 】
なお、最高500MHzまで測定できる別の測定器の結果で「いつでも電源」を測定すると、500MHzでVSWR=1.6(80Ωくらいかな?)、DCジャックの短絡/開放の測定値差無しの結果も得られています。
End of This Page.