Memorandumの小部屋
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なつかしゲーム タンクバトル
1. AY−3−8700−1の入手
70年代後半よりTVゲームLSIを使ったキットが出回りはじめました。 当時は学生で金欠病にもかかわらず、記憶では2万円相当の4人テニスゲームのような完全キット( 使用LSI AY-3-8500 Ball & Paddle)を購入して遊んだ記憶があります。 残念ながら、このキットは卒業時に後輩に上げたと思います。
当時のTVはビデオ入力がないのが当たり前のためRFモジュレータを使ってTVの1chもしくは2chで映してみるのが一般的でした。 また、白黒のTVゲームでしたが、これをカラー化するカラーコンバータ基板も購入していました。 ただ、カラー化はうまくいかなかったので、すぐに諦めた記憶があります。 (多分、この基板はジャンク箱にあると思います。)
このような記憶が薄れている最中、たまたまAY-3-8700-1 タンクバトルゲームLSIのセットを入手することができました。 AY-3-8500に比べてあまり印象に残ってはいないLSIではありましたが、当時を思い出して頑張って入手しました。 また、簡単な資料も付属しているようなので、入手しても簡単に自作できるだろうと安易な気持ちでスタートしました。
【 AY-3-8700-1 セット外観 】
今回入手できたセットの部品構成は下記画像のように、基板とCR類が1セット、IC関連は2セットとなっていました。 専用LSIが2セットあるのがとても魅力的です。 ICとしてはゲーム用LSI「AY-3-8700-1 Ball & Paddle」とカラー化IC「AY-3-8515 Color Picture Encoder」が各2個あります。
【 構成部品 外観 】
付属していた資料はB4サイズの両面コピー1枚で、回路図、専用基板パターン/実装図、ユニバーサル基板配線図が掲載されていました。 これを基にして製作しようと思いましたが、操作スイッチの配線がよく分かりません。 インターネットで調べればどこかに資料があるだろうと思っていましたが、とても甘い考えでした。 「無い、どこにも見つからない、LSIメーカのGIのデータシートも見つからない。」ということで、製作を一時は諦めていました。
【 資料1(回路図、専用基板パターン/実装図) 】
【 資料2(ユニバーサル基板配線図) 】
とはいうものの、毎日、机の上に置いてあったLSIが、「作ってくれ、作ってくれ」と言うので、考え直して製作着手しました。 資料の回路図は下図のようになっています。 C−MOSで4MHzの発振をさせています。(うーーーん、大丈夫かな。) 20MΩ(10MΩ2本直列)の抵抗が必要。 (えーーー!うっそーーー! 基板触ることもできないし、動作しないときの波形測定もできない。) ちょっと心配な回路でした。
なお、今更RFモジュレータでもないので、コンポジット信号であろうと思っていたVideo OUT信号を直接取り出すことにしました。
【 回路図拡大 】
また、とても強い味方もあります。 それは、専用基板です。 専用基板があるということは回路的な完成度はきっと高いに違いありません。 しかし、スイッチ部の接続は依然と不明です。 取りあえず、タクトスイッチを付けるようにしました、 回路図のシンボルから、L/R信号でA〜Eのキーをスキャンしていると予想しました。
専用基板は頼りになります。
【 専用基板(部品面/ハンダ面) 】
2. AY−3−8700−1の製作(回路立ち上げ)
回路図を基にして製作スタートです。 回路図の部分については1日で製作完了しました。 製作終了後、電源供給しましたがTV画面に何も映りません。 回路図通りに製作できているかどうかは当然チェックしましたが、間違いはありません。
次のステップは各ICの電源電圧チェックです。 なんと、肝心のAY-3-8700-1に電源が供給する配線が回路図にありません。 やはり専用基板の出番です。
以下、回路立ち上げにおける回路見直し経過を下記します。
【 回路図見直し状況 】
部位 | 見直し内容 |
A部 | AY-3-8700-1の電源供給がなされていませんでした。 専用基板のパターンをトレースして、回路図の記載ミス部分を修正しました。 これにより、映像が映りはじめましたが、白黒、もしくは、とても薄い色でしか映りません。 また、机上のシャープ液晶TV LCD−13A1では、色ずれは別にしてそれなりに映っていますが、「ワイド5.4インチRGB液晶モニター」では何も映りません。
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B部 | 上記回路のVIDEO
OUT信号波形を観測すると下記のようになっていました。 振幅が不足しているだけではなく、同期信号と黒レベル信号が同じレベルというコンポジット信号からかけ離れた信号となっていました。 従来の回路ではRFモジュレータで変調をかけることで、このような信号でも受像側TVでそれなりに復調できているのでしょう。
当初はトランジスタCS1816の替わりに2SC1815Yを使用したのが問題かと思いました。 しかし、たいした高周波でもないのでそれほど違いがあるとは思えません。 hfeに違いがあるのかと思いでhfeを測定するとhfe(DC)=27しかありません。 2SC1815Yでは軽くhfe(DC)=100以上あります。 これではさすがにCS1816にしようという気になりません。 やはり、回路的な問題のようです。 結局、回路図の見直しを行うことにしましたが、映像をどの機器でも映るようにすることに時間を要してしまいました。 正直、まだまだ不完全ではありますが、取りあえず 手持ちの範囲の受像器でも映像信号を映し出せるようになりましたので公開させて頂きます。 (当方の技術力不足ないため、ここまでが精一杯でした。) まず、同期信号を上記信号に明確に付加する必要がありました。 AY-3-8700-1の信号を当たっていると、18ピンから同期信号が出力されていることが判明しました。 B部に記載のように、この信号を4011の空きゲートとトランジスタ2SC1815Yを使って映像信号増幅トランジスタ (CS1816部分)に加えました。 当初はこのトランジスタCS1816のベース側に入力しましたが、思ったような波形にできなかったため、最終的には上記回路図のようにエミッタ側に加えました。 しかし、これでも「ワイド5.4インチRGB液晶モニター」ではうまく映像化できませんでした。 最終的には、上記Video OUT信号をNJM2267Dで増幅する ことで「ワイド5.4インチRGB液晶モニター」でカラー表示できるようになりました。 その際の映像信号波形を下図に示します。 NJM2267Dの増幅回路はデーターシートの回路そのものを利用しております。 一応、今回の回路図は後述のビデオアンプ回路に記載しております。
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C部 |
映像信号が改善したので、次に音声を確認すると、なんと常に効果が発生しています。 ここでも回路図と専用基板を比較したところ、回路図ではAY-3-8700-1の21ピンと23ピンの出力を受けている4001の5番、6番ピンが接続されていないことが判明しました。 早速、この部分の接続を行い動作確認をしましたが、それでも常に効果音が発生しています。
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D部 |
ここで、LSIが2組あることより、AY-3-8700-1を交換してみました。 ピタリと音がとまり、操作スイッチや砲撃に応じてそれなりの効果音が発生しておりました。 と、いうことは、先程まで使用していたICが壊れていた?
ただ、先程のAY-3-8700-1でも4001付近の回路を指で触ると効果音が止まることもありました。 せっかく入手したLSIですので、AY-3-8700-1Iの故障と考えたくありませんでした。 26番ピンの接続先である4001の1番ピンの電位は、 主に26番ピンの出力インピーダンスと20MΩの分圧比で決まります。 (正確には4001の1番ピンの入力インピーダンスも影響します。) つまり、LSIの 26番ピンの出力インピーダンスのばらつきによっては、今回のような現象は考えられます。 26番ピンリーク電流がちょっと多いだけで今回のように常時効果音が発生することになります。 この対応としては、できる限り低インピーダンスにすることです。 最終的にはD部に掲載のようにCR直列回路で、抵抗値を4.7MΩに低下させることで、それなりに動作 させることができるようになりました。
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E部 |
この回路(AY-3-8700-1)では、電源を投入したときにまともにリセットできないようです。 リセットSWがあるので
電源投入時にリセットSWを押すことを標準操作と割り切っているのでしょう。 また、ゲームオーバー時もリセットSWを押す必要があり、そもそもリセットSWを押すのが当たり前の思想なのでしょう。 でも、せめて電源投入時のリセットくらいは働いて欲しいと思ってパワーオンリセット回路を追加しました。 この定数でほぼリセットがかかるようですが、時たまリセットがかからないこともあります。 実際には、もう少し定数見直しを行った方がよいかもしれません。 (今回設けていないコンデンサ放電用ダイオードの有無の問題ではないようです。)
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電源 回路 |
上記回路では電源トランスを使用するようになっていますが、今回は適当に転がっているACアダプタを使用することにしました。 よって、基板上には整流回路以降の回路を製作しています。 三端子レギュレータ7805の手持ちがなかったため、7805と整流用ダイオードを組み合わせて5.5Vにして使用しています。 AY-3-8700-1の発熱についてしつこく記載されていましたので、電源電圧は低めに設定しています。 電源ライン用のパスコンと平滑用コンデンサは回路図に関わらず、実装できる部位にはできる限り追加して入れておきます。
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音声 出力 |
音声出力レベルを調整できるようにレベル調整VRを追加しました。 |
3. AY−3−8700−1の製作結果
今回の製作は、下図のようにAY-3-8700-1を搭載したメイン基板と、ビデオアンプ基板、左右コントローラ基板の計4枚構成となりました。
各基板を接続しているコネクタ付き電線としては、ハーネス品を秋葉原の日米商事で購入したストック品を使用しています。 2ピンと5ピンの2通りのハーネス品と基板側コネクタを購入してストック
しています。 このようなコネクタ付きの電線はちょっとした接続用にともて便利です。 いちいち電線付きコネクタを製作しないですみ、また、基板同士を切り離せるのでとてもお勧めです。 いろいろなジャック屋で各種出回っていると思いますので、電気街俳諧されたときに是非入手されてストックされることをお勧めします。
【 タンクバトルゲーム基板構成 】
メイン基板の製先例及び回路図を下図に示します。 カットアンドトライした結果、ジャンパー線がさらに増えてしまいました。
【 メイン基板 製作例 】
上図をクリックすると画像を拡大できます。
【 メイン基板 回路図(修正部位) 】
追加したビデオアンプ基板、左右コントローラ基板外観と回路図を掲載します。
【 ビデオアンプ基板、左右コントローラ基板 外観 】
上図をクリックすると画像を拡大できます。
【 ビデオアンプ基板、左右コントローラ基板 回路図 】
4. 動作例
実際に動作させたときのキャプチャ画像を下記に掲載します。
下図は電源投入当初の映像です。 残念ながら、下記キャプチャ画面は、レタッチを行い相当見えやすくしています。(レタッチしていない画像は下方に掲示している「戦闘プレイ例」を参照願います。)
それでも、白が少し赤みがかって見えています。 また、同期信号が深くかかり過ぎている関係でレベル変動を起こしており、黒色が灰色に見えています。
ジッタはそれなりにあります。 特にに白の得点について変動が目につきます。 戦闘フィールド内はそれほど気にはなりません。
ちなみに、下記戦闘フィールド内の黒四角は地雷で、白ブロックは障壁とのことです。 地雷にぶつかるとタンクが自爆します。 障壁はタンクは通過できますが砲弾は障壁に当たると爆発します。
【 動作画面 】
操作方法は当初よくわかりませんでした。 試行錯誤の結果、SWの動作は下記のようになっているようでした。
SW | 動 作 |
Aボタン | 右キャタピラ後進 |
Bボタン | 右キャタピラ前進 |
Cボタン | 左キャタピラ前進 |
Dボタン | 左キャタピラ後進 |
Eボタン | 砲撃 |
これより、タンクの操作方法は下記のようになります。 どうも、資料に掲載してあるスイッチの配線は上記のスイッチ動作の組み合わせを直感的に操作できるように、スイッチ操作で、前進/後進と左/右旋回に置き換えているようです。
動作 | S W 操 作 |
前進 | BボタンとCボタンを同時に押す。 |
後進 | AボタンとDボタンを同時に押す。 |
右旋回 | AボタンとCボタンを同時に押す。 停止に操作するとその場右旋回。 |
左旋回 | BボタンとDボタンを同時に押す。 停止に操作するとその場左旋回。 |
前進停止 | AボタンとDボタンを同時に押す。(後進操作) |
後進停止 | BボタンとCボタンを同時に押す。(後進操作) |
現状の回路では映像を映す機器で映り方が結構替わってきています。 今回確認した機器での結果を下記します。
SW | 動 作 |
シャープ液晶TV LCD−13A |
色は赤みがかっているが、映像は比較的シャープに映る。 黒色部分は灰色っぽくなってる。 白タンクの砲弾ははっきり見える。 |
ワイド5.4インチRGB 液晶モニター |
緑、白、黒とも色あいは比較的よい。 解像度が悪いため、白タンクの砲弾はほとんど見えない。 |
SmartVision Pro (TVキャプチャ) |
色は赤みがかっている。 映像も滲んで見える。 緑は比較的よく色がでるが、黒は灰色っぽくなっている。 白砲弾も見辛い。 |
DVDレコーダ | 色は赤みがかり、輝度不足となっている。 映像も滲んで見えるが、SmartVision Proよりは少しまし。 白砲弾も見辛い。 (下図戦闘プレイ例を参照下さい。) |
実際にプレイしている映像をDVDレコーダで記録した一例を下記に掲載しております。 下記画像をクリックすると白タンクが黒タンクを砲撃したときの映像を見ることができます。
上記画像をクリックすると数秒間の映像を見ることができます。(wmvフォーマットです。)
【 戦闘プレイ例 】
5.参考資料
上記製作中に神奈川県のS様より本キットに関する情報及び、キットに付属していた説明書など関連資料のご提供を頂きました。
この情報により、今までの製作の妥当性について確認することができました。 さらに、今回の部品が「タンクバトル(戦車戦争)TVゲームキット」であることが確認できました。
さらに、このキットについて紹介されている「ラジオの製作」の入手についての情報も頂きました。 早速、お教え頂きました「ラジオの製作」も早速入手して、得点の疑問などもはっきりしてきました。
おかげさまでいろいろな事がはっきりしてきました。 この場を借りまして神奈川県のS様に御礼申し上げます。
ご提供頂きました資料等をもとに、今回紹介しました秋月電子通商のキットについての情報を下記します。
当初、このキットはユニバーサル基板で製作するようになっていたようです。
資料作成日付は、1980年3月17日です。
地雷を踏んだときにの失点はランダムであるとのことでした。 プレイ中に地雷を踏んだときの失点が一定しないのをおかしいなと思っていましたが、これが正常な姿であるということがわかり安心しました。
前後進スピード操作については、1秒以上押し続けることでロー・スピード、さらに1.5秒押し続けるとセカンド・スピード、さらに1.5秒押し続けることでハイ・スピードになるとのことでした。
「ラジオの製作」の記事の内容と秋月電子通商のキットの資料が一致しているようです。 秋月電子通商はこの記事を利用して取扱説明書を作成し直したものと思われます。
専用基板のパターンは、この記事のパターンをベースに改善されているようです。
秋月電子通商の広告に本キットの広告が掲載されていました。 まだ専用基板化されていない時期のようですが、スイッチ込み部品1式で4,500円となっていました。 また、この広告に「音声多重放送アダプターキット (2カ国語放送用)」の広告も掲載されていました。 これで、改めてこのキットが秋月電子通商のキットであることが確認できました。
S様ご提供キット説明書(1ページ目)
【 キット説明資料 】
【 本キット掲載のラジオの製作 】
【 キット 掲載記事(1ページ目) 】
【 キット 掲載記事(操作スイッチ掲載ページ) 】
【 秋月電子通商 掲載広告(キット部分抜粋) 】
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