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NiCd放電器と充電器は紙一重!!
(バッテリーリフレッシャーを充電器として使用)
【 原理 】
秋月電子通商の「バッテリーリフレッシャー定電流自動放電器キット」はNiCd電池を長持ちさせるために必要なツールの一つです。
このキットは通常は図1のように電源(電圧V1)と放電したいNiCd電池(電圧V2)を接続し、NiCd電池の両端電圧が予め設定された電圧以下になるまで一定の電流で放電してくれるキットです。
つまり、このキットは、Vbatの端子が予め設定された電圧以下になるまでVbat端子から一定の電流を吸い込むように設計されています。
この機能を使えば定電流でNiCd電池を充電し、予め設定された電圧になると充電を停止するNiCd充電器として利用することができます。
このようにNiCd放電器をNiCd充電器として利用するための接続方法を図2に示します。充電したいNoCd電池を電源のVinとVbatの間に接続します。このときの各電圧の関係は次の式で表すことができます。
V1 = V2 + V3 ・・・ (1)
V1:電源電圧
V2:NiCd電池電圧
V3:NiCd電池充電電流が一定となるように電圧が変化
という関係となります。 但し、V1>V2が保証され、かつ、V1の供給源である電源は定電圧電源(安定化電源)でなければなりません。
この自動放電器キットはVbatに吸い込まれる電流を定電流に制御する機能を持っていますから、電源→NiCd電池→Vbat端子入力を経由する経路で定電流が流れ、NiCd電池を一定電流で充電することになります。
この図2の回路において、NiCd電池が充電されるにつれてNiCd電池両端電圧V2が大きくなります。 V1が一定とすれば、(1)式の関係が保たれ、V2が大きくなればV3が小さくなるように自動放電器キットが制御を行い、V3が一定電圧以下になれば充電を停止します。
つまり、図2の回路のように接続すれば自動放電器を自動充電器として使用することができるのです。
【 動機 】
そもそもこのような事を考えるようになったきっかけは、「006P型Ni-Cd蓄電池専用トランスレスチャージャキット」に付属していた006P型Ni-Cd蓄電池RC22の適切な充電器が無かったからです。
「006P型Ni-Cd蓄電池専用トランスレスチャージャキット」はキット名にあるようにトランスレスのためビリビリ感電覚悟で使わないといけないという危険きわまりないものであり、このキットを製作する気がしません。このため、006P型Ni-Cd電池を使いたくても充電器がなくて困っていたのです。
【 設計例 】
放電器としては、内部回路がはっきり分かっている秋月電子通商の「バッテリーリフレッシャー定電流自動放電器キット」を使用します。以下、このいキットの取扱説明書の回路図と伴にお読み下さい。
このキットでは2SC1416(もしくは相当品)のエミッタ側の抵抗Re(標準で1.2Ω)が定電流設定抵抗となります。 この抵抗値の両端電圧が定められら一定電圧Veとなるように制御されます。 この一定電圧Veは部品の特性のばらつきによって異なり、Ve=0.5〜0.7Vの範囲内にあります。設計上はVe=0.6Vとします。 よって、定電流制御されたVbat吸い込み設定電流Ieは次式となります。
Vbat吸い込み設定電流 Ie=Ve/Re=0.6/1.2=0.5A ・・・ (2)
もし、Vbat吸い込み設定電流Ieを変更したければ、上式に設定したい電流IeとVe(0.6V)を代入して抵抗Reを求めます。 計算から求めた値にもっとも近い標準抵抗値(例えば計算値0.54Ωならば数列E12のなかから0.56Ωとする。)とします。多少計算との差があっても充放電時間に多少の違いが生じるだけですから、あまり細かいところにごだわることはないでしょう。えいや〜設計でいいでしょう。
次に充放電終了電圧の設定を行います。 このキットではLM358Nの5番ピンと6番ピンの電圧をコンパレータで比較して終了検知を行っています。
Vbat電圧は30kΩと10kΩで約1/4に分圧してLM358Nの6番ピンに入力されます。 また、LM358Nの5番ピンには安定化された5Vを抵抗と半固定VRで分圧して充放電終了電圧設定信号として入力されます。 NiCd電池にもよりますが、1セル当たりの放電終了電圧は約1Vですから、1セル当たりの5番ピンの設定電圧は約0.25Vとなります。
以下、具体的例を示します。 まず、図1における006P型Ni-Cd蓄電池RC22の充電器としての設定値について計算します。
この006P型Ni-Cd電池の放電終止電圧は7Vとなっています。よって、LM358Nの5番ピンには1.75V(=7.0/4)の電圧が印加できればよいことになります。
また、放電電流は006P型Ni-Cd電池のデータシートから30mAと設定します。この設定から放電用抵抗値Reを(2)式より求めると20Ω(=0.6/0.03)となります。この20Ωは10Ωを2本直列接続します。
次は、図2における006P型Ni-Cd蓄電池RC22の放電器としての設定値について計算します。
この006P型Ni-Cd電池の充電完了電圧9.8Vとなっています。定電流電源の電圧を12VとすればVbat端子電圧V3は(1)式より
V3=12V−9.8V=2.2V
よって、LM358Nの5番ピンには0.55V(=2.2/4)の電圧が印加できればよいことになります。
また、充電電流は006P型Ni-Cd電池のデータシートから14mAと設定します。この設定から放電用抵抗値Reを(2)式より求めると43Ω(=0.6/0.014)となります。この43Ωはえいや〜で10Ωを4本直列接続の40Ωとします。
実際の製作する回路の検討時、図1と図2の回路の切替や、各種設定の切替をスイッチ一つで切り替えたくなります。 そこで手持ちのロータリーSWを調べると千石電商で購入した2段2回路6接点のものがありましたので、このロータリーSWに合うような仕様で回路設計しました。
このロータリーSWでは6つの設定を切り替えることができます。そこで表1のような切替仕様としました。
No |
1 |
2 |
3 |
4 |
5 |
6 |
対象電池 |
単3 2本 |
単3 4本 |
単3 6本 |
単3 8本 |
006P型 |
006P型 |
機能 |
放電 |
放電 |
放電 |
放電 |
放電 |
充電 |
充放電 |
500mA |
500mA |
500mA |
500mA |
30mA |
14mA |
定電流設定抵抗 |
1.2Ω |
1.2Ω |
1.2Ω |
1.2Ω |
20Ω |
40Ω |
終了 |
2.0V |
4.0V |
6.0V |
8.0V |
7.0V |
2.2V |
終了 |
約0.5V |
約1.0V |
約1.5V |
約2.0V |
約1.75V |
約0.55V |
【 製作例 】
以上の結果を元に「バッテリーリフレッシャー定電流自動放電器キット」を使った充放電器の改造部及び追加回路の回路図を図3に、外観図を図4に示します。
(2009-03-05にLM358N 5pin接続誤記訂正版に差し替え。 大阪府のN様、ご連絡有り難うございました。 )
図3 充放電器 回路図
図3の終了電圧設定VRには2kΩを共通に使用しております。 終了電圧設定VRやVRの両端側の抵抗値は図3の定数にこだわることはありません。 調整しやすくなるように適当に変更されてもよいと思います。(今回は手持ちがなくて実施できなかったのですが、10回転の半固定VRならばVRだけでも十分と思います。)
またVbat電圧の1/4への分圧を100kΩの10回転半固定VRに変更しています。これは単3タイプのNiCd電池ならば放電電流が500mAと大きいので分圧回路への電流は無視できますが、006P型Ni-Cd電池では充放電とも10〜30mAと小さいため、分圧回路の電流を小さくしたかったため抵抗値をアップしました。 また、好みの問題ですが、電圧を分圧するのは同一部品で分圧すれば温度による誤差がほぼゼロにできますので、分圧回路には10回転半固定VRを使用するように変更しています。 なお、これはは好みの問題ですから、かならず変更しなければならないものではありません。
図4 充放電器 外観図
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