Memorandumの小部屋
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第2のゲルマニウムラジオ!!
ソフトウェア・ラジオの製作。
1.背景
台風対策でアンテナを下ろして以来、アマチュア無線にほとんど時間をとっていない状況ですが、薄ぺったくなったうえに価格も高いCQ誌を頑張って買い続けています。 でも、あまり本気で記事を読む機会も減ってきていました。 そのようななかで2006年12月号もトランジスタ技術同様に、とうとう基板付属という毒牙(?)にかかってしまっていました。 あまり本気で本誌を読んでいなかったのでソフトウェア・ラジオって何?ということで記事を読みはじめました。
簡易版ということですが、とても少ない点数で受信できるというではありませんか。 回路図を見ても、とてもラジオ(受信機)に見えません。 これは試しに経験しておこうということでソフトウェア・ラジオにトライすることにしました。
(画像サイズ大きいですが、宣伝と思ってこらえて下さい)
【 まだ頑張って毎月購読しているCQ誌 】
【 付属基板パッケージ表面 】 |
【 付属基板パッケージ裏面 】 |
もともとは、上記パッケージから基板を取り出すつもりはありませんでした。 しかし、後述の回路図確認のために泣く泣く封を開けて基板を取り出してしまいました。
【 付属基板 部品面 】 |
【 付属基板 ハンダ面 】 |
記事を読み始めて、発振回路の部分を使用用途によって変える(受信周波数の4倍の発振器があればよい)ように読みとれました。 しかし、正直、初めて読んだときにはちょっとわかり辛い部分が多々ありました。 特に発振回路の回路図が1つの図にまとめて記載してあったため、発振器がマルチバンド用、モノバンド用の2つもいるのか、その接続はどうなるのかなどと思いながら記事を読んでいきました。
ただ、とてもシンプルな回路にも関わらず、こんな回路でも受信機になるのかと思いつつ、手持ち部品で製作できるので製作に着手することにしました。
ところで、「第2のゲルマニウムラジオ」は、本文の文末に趣旨を記載しておりますので、是非最後までお付き合いをお願いします。
2. 「ソフトウェア・ラジオ」のハード製作
CQ誌の記事では受信周波数7MHzなどのアマチュア無線周波数を前提に記載されていました。 確かにアマチュア無線の雑誌ですから当然と言えば当然ですね。 でも、当方で製作する場合は別にアマチュア無線を聞きたい人ばかりではないはずです。 アマチュア無線という単語だけで「関心ないや。」など声が聞こえそうです。 せっかく「ソフトウェア・ラジオ」と名乗っているのですから、ラジオでいきましょうということで中波ラジオ(AMラジオ)をターゲットにすることにしました。
付属基板は発振回路の部分に実装上・回路上の汎用性が無く、製作上の制約にもなっているように思えました。 また、回路的にもアナログ高周波っぽい部分がなく、周波数的にも中波帯ということもあり。付属基板を使用する必要性も感じられないため、今回はユニバーサル基板で製作することにしました。
ターゲットとする周波数は中波(531〜1602kHz)ですので、この4倍の発振回路が必要になります。 水晶振動子を使用した発振回路であるのがベストですが、今回は味見であること、製作の壁が高くないことということでC−MOSロジックを使用した汎用の発振回路とすることにしました。
オペアンプは秋月電子通商のNJM4580DDを使用することにします。 後は記事に沿って回路図を書き直して製作に入りました。 最終的な回路図を下記に記載します。
【 中波用ソフトウェア・ラジオ回路図 】
パソコンへの接続にピンジャックを設けています。
【 中波用ソフトウェア・ラジオ製作例(全体像) 】
銅板シールドは不要です。(本記事後述。)
【 中波用ソフトウェア・ラジオ製作例(基本回路) 】
【 中波用ソフトウェア・ラジオ製作例(発振回路) 】
一番最初はCQ誌の記事を参考に製作していきましたが、アナログスイッチの部分が釈然としませんでしたが回路図の間違いは救いだろうと思いながら製作していきました。 結論から言えば、その回路でも確かに復調できましたが、やはり何かおかしい気がしたのでインターネットで調べた回路と違います。 仕方ありませんので、(泣く泣く)付録の基板を取り出しパターンをトレースするとCQ誌の回路図が間違っていました。 アナログスイッチの回路は上記回路図が正しいようです。
電源回路のCaの330μFは追加しています。 電源電圧のリップル低減と3端子レギュレータ逆電圧印加防止のために設けておく必要があります。 というものの、実は製作した基板ではこの電解コンデンサを実装するのを忘れていました。 無くても支障はありませんが、基本回路としては忘れてはいけない部品です。 なお、330μFのコンデンサ容量は330μF以上でしたら何μFでも構いません。
発振回路の部分は受信周波数を変えられやすいようにコネクタ取り合いとしました。 最大30MHzの高周波を使用する前提ということで導体部分が機械的にしっかりした中継コネクタを使用したかったのですが、適切なコネクタの手持ちがありませんでしたのでLCDグラフィック・ディスプレイモジュールSG12232C バックライト付(P-00714)などで使用されている20Pinのピンフレーム、ピンヘッダを使用することにしました。 このため、発振回路基板はハンダ面が表を向くような取付となりました。 よって、周波数調整VRは周波数調整できる位置に実装する必要があります。
発振回路のコンデンサはセラミックコンデンサを使用するので構いません。 当方は、たまたま手持ちのマイカコンデンサがありましたので、周波数変動低減のためにこれを使用しました。 実はマイカコンデンサを使用するために82pFなどという中途半端な静電容量を選んだというのが実状です。
今回の発振回路では最低受信周波数が650kHz〜2MHz程度(発振回路の発振周波数は受信周波数の4倍)でした。 中波ラジオとしてはもう少し低い周波数が受信できるように発振回路の定数を見直す必要があります。 ただし、使用する74HC04によっても発振周波数が異なりますので、最終的にはカットアンドトライして決める必要があります。 一番簡便な方法はR31の100Ωを220〜470Ω程度に変えてみることかと思います。 ただ、当方は受信したい765kHzが受信できていますのでR31の微調整を行っていません。
周波数調整VR31の抵抗値を高くする方法もありますが、VR31での周波数調整が敏感になってしまい調整し辛くなりますのでお勧めできません。 また、VR31は多回転VRを使用することを強く推奨します。
アンテナ部分のQ1,2SK241の回路、及び、基板外のVR32は当方で勝手に追加した回路です。 これらについては後述します。
3. 「ソフトウェア・ラジオ」の動作
ハードが完成するとパソコンに接続してソフトをインストールしないといけません。 また、今回のターゲットは中波ラジオですのでAMの復調がでいないといけません。 残念ながらCQ誌で紹介されているソフトRockyではAMを復調できません。(我慢すれば聞けないこともありませんが。。。)
今回は、SDRadioというソフトを使用することにしました。 このソフトの入手はインターネットの検索サイトで調べて頂けますようお願いします。 有名なソフトらしく、簡単に見つかるはずです。
このソフトをインストールして地元放送局KRY765kHzをターゲットに受信を行いました。 周波数スペクトラム表示までは基本回路性格から受信開始まではとてもスムーズに進めむことができました。
受信周波数を確認のためにマーカー発振信号を使用することにしました。 KRY765kHz×4倍程度の安定した発振器としてディップメータやSWアナライザBR200などを使用することもできますが、一番適切なのが「周波数変更は全桁表示が一番!!!」で紹介していますDDSキットだと気付き、これを使用したマーカ発振信号を使いました。 しかし、今回、久々にマーカ発振などという用途を用いましが、今の若い方は受信周波数確認にマーカー発振器を使用するなんてご存じないのではとふと思ったりしました。
下図画面画像はマーカー757kHzを注入したときの画面例です。 ところが、マーカの発振周波数を変えるとマーカーの周波数スペクトラムのピークが中心周波数を軸として両サイドに現れていることが判明しました。 またKRY765kHzも同様にイメージが発生しているようです。
【 ソフトウェア・ラジオ動作画面 】
ここからが格闘の始まりでした。 発振回路の寄生発振や発振回路出力信号に振幅変調がかかっていて悪さをしていないか、発振回路の不要輻射ではないか、発振出力信号波形のリンギングが悪さをしているのではないか等の調査を行いましたが原因がつかめませんでした。
上記中波用ソフトウェア・ラジオ製作例(基本回路)の画像にある銅板は、この調査段階で発振回路の不要輻射が悪さをしているのではないかと思い74HC74の回路部分をシールドするために設けたものです。 なお、最終的には不要輻射の問題ではなかったので、このような銅板は不要です。
そうこうしているうちに音声入力のバランス調整も必要との記載がどこかにあったのを思い出し、パソコンのバランス調整を行うと確かに周波数スペクトラムのピークの大きさが変化します。 しかし、パソコンでのバランス調整は分解能が悪いのかピークのイメージを無くすことはできませんでした。
そこで、2連VRと「自作AVユニット Ver.2」の製作時に残った電線付きピンフラグを使用してバランス調整を行ってみました。 これが上記回路図のVR32です。 やはりバランスの問題であったようで、不要な周波数スペクトラムのピークを大幅に低減することができるようになりました。 この調整に使用したVR32の調整部分の画像、及び、調整後の周波数スペクトラムを下図に掲載します。 不要ピークを完璧に無くすことはできませんが、大幅に改善されました。
【 バランス調整用VR及びピンプラグ 】
【 改善後の周波数スペクトラム 】
いよいよラジオとしての機能確認です。 地元放送局KRY765kHzをターゲットに受信を行います。 しかし、周波数スペクトラムのピークは表示されますがありますがビートばかりで放送がなかなか聞こえません。 発振回路の周波数調整を行うと、時たま大電力の近隣諸国の放送が聞こえることもありましたが、とても感度の悪い感じです。
周波数スパン3kHz IF1.5kHz
【 CQ誌の基本回路(相当)でのKRYの受信状態 】
やはり受信感度を上げる必要がありそうです。 この対応として「100円ラジオのバーアンテナとポリバリコンで同調回路を追設」も頭をよぎりましたが、アナログ部品を極力少なく、また、基本回路の基板で内で対応するようにしたかったため、Q1の2SK241を使った高周波増幅を1段設けることにしました。
アンテナ接続部のC21の0.1μFは積層セラミックでも普通のセラミックコンデンサでもどちらでも構いません。 また静電容量も1000pF以上であれば何pFでも構いません。 手持ちのコンデンサで該当するものをご利用下さい。(周波数が比較的低いといってもフィルムコンデンサは不適です。) また、R22は2SK241のYランク品の抵抗値です。 2SK241のOランク品だと1kΩ、2SK241のGRランク品だと180Ω〜470Ω程度となります。 GR品はばらつきが大きいので、できる限り使用しない方がよさそうです。
高周波増幅を1段設けるだけでKRYをはっきり認識できるようになりました。
周波数スパン3kHz IF1.5kHz
【 高周波増幅1段追加時のKRYの受信状態 】
上記スペクトラムにあるように、全般的に信号レベルが上がってきていますが、対ノイズとのレベル差はそれ程改善されているようには見えません。 しかし、KRYの瞭度は確実に良くなってきています。 実際の放送を録音した音声を下記します。
・ KRYでの時報アナウンスの録音例 (クリックすると録音を聞くことができます。)
この録音では音声がこもって聞こえますが、リアルタイムの受信ではもう少しはっきり聞こえます。 このようにこもって録音されているのは、SD Radioの受信帯域幅を1.5kHと結構狭くしていることが原因です。 このように帯域を狭くした理由は、ノイズの影響を小さくするためです。
しかし、ソフトウェア・ラジオはスペクトラムアナライザ、帯域、変調状態などの受信状態をビジュアルに見る(体感)できるとてもわかりやすい機能満載です。 完璧に時代に取り残されていることを実感し、これで、ソフトウェア・ラジオの味見は一段落です。
4.最後に
当方が育った頃は、ほとんどの人がゲルマニウムラジオ製作を一度は経験するなど、ゲルマニウムダイオード1本を使ったシンプルなゲルマニウムラジオが電子工作入門の定番でした。 わずかな部品で何もないところから声が聞こえる不思議さを実感し、なぜなのかなと興味を持ち、電子回路の世界に入り込むきっかけを与えてくれるものでした。
しかし、ディジタル主流の時代となってからはゲルマニウムラジオの存在すら知ることなく、電子機器はブラックボックスが当たり前となり、電子回路に興味を持たせるような電子機器は無くなったのではないかと思っていました。
今回、ソフトウェア・ラジオを経験して、久々に感嘆させられました。 とてもラジオに思えない電子回路から何故かラジオ放送を聞くことができる不思議さ、思わずゲルマニウムラジオの存在を初めて知ったときと同じような興味をもたされました。 使用部品はゲルマニウムラジオよりは多く製作の壁も高いですが、パソコンとの連携も必要となり、今の時代に即していると思います。
このような思いも有り、本頁のタイトルに「第2のゲルマニウムラジオ!!」と付けさせて頂きました。
End of This Page.