Memorandumの小部屋
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オペアンプあれこれ (その1)
秋月電子通商などで取り扱っているSainSmart社製の「DDSファンクションシグナルジェネレータキット (K-09987)」はキットの小部屋で紹介したように期待する波形を得ることができませんでした。 現象からオペアンプの選定に問題があるようでしたので、手持ちのオペアンプをいろいろ差し替えて試してみました。 その結果、TL082CP、NJM082BDで良好な結果を得ることができました。 これらのオペアンプに差し替えて利用することをお勧めします。 なお、オペアンプ交換をする際には「4.プローブの影響」に記載のキャパシタを追加します。
【 DDSファンクションシグナルジェネレータキット (K-09987) 通電状態 】
今回、一般的な使い方における多種類のオペアンプ出力比較を初めて測定しました。 今までは入手性、オーディオ信号帯域での感覚的な感触でNJM4558DDを標準オペアンプとしてストックしていました。 今回の結果より、これからはTL082CP、NJM082BDをストックするように変更します。
1. 「DDSファンクションシグナルジェネレータキット (K-09987)」の問題点
本キットの動作確認をしたところ以下の問題点がありました。
(1) 出力波形が期待する波形にならない。
(a) 正弦波出力において、位相0°、180°付近(0V遷移前後)に波形変動が観測されました。
他の波形においても0V遷移前後で波形変動が確認されてました。
(b) 周波数が高くなると入力のDA変換波形を正しく増幅(演算)できなくなる。
(2) 出力波形の周期が一定でない場合がある。
このうち(1)はオペアンプに起因する現象と思われますので、ピン互換性のある別のオペアンプ、もしくは、同一型式でもメーカを変更することで改善する可能性があります。 ということで、手持ちのピン互換性のあるオペアンプ交換にトライすることにしました。 (2)についてはユーザでは手の打ちようがありません。
2.調査対象のオペアンプ
今回の調査に用いたオペアンプを下記表に掲載します。 掲載の順番には特に意味はありません。 なお、下記表中のデータはオペアンプのデーターシートを参照してピックアップしていますので不明部分は”−”印としています。
No. |
型式 |
メーカ |
特徴 |
電源 [V] |
スルーレート [V/μs] |
利得帯域幅積GB [MHz] |
ユニティゲイン周波数 |
備考 |
1 |
LM358BP |
Ti |
Low Power Dual Operational Amplifier |
3〜30 |
− |
0.7 |
− |
キット付属 |
2 |
NJM4580DD |
JRC |
オーディオ用 2 回路入りオペアンプ |
±2〜18 |
5 |
15 |
− |
|
3 |
TL082CP |
Ti |
Wide Bandwidth Dual JFET Input Operational Amplifier |
±5〜18 |
13 |
4 |
− |
|
4 |
NJM2114D |
JRC |
ハイファイ・オーディオ用 2 ハイファイ・オーディオ用 2 回路入り低雑音オペアンプ |
±3〜22 |
15 |
13 |
− |
|
5 |
HA17458PS |
HITACHI |
デュアルオペアンプ |
±3〜18 |
0.6 |
− |
− |
|
6 |
TLE2062CP |
Ti |
EXCALIBUR JFET-INPUT HIGH-OUTPUT-DRIVE μPOWER OPERATIONAL AMPLIFIRE |
±3.5〜18 |
3.4 |
− |
1.8 |
|
7 |
OPA2277P |
BB |
High Precision OPERATIONAL AMPLIFIERS |
±2〜18 |
0.8 |
1 |
− |
|
8 |
NJM4560DD |
JRC |
2 回路入り汎用オペアンプ |
±4〜18 |
4 |
10 |
− |
|
9 |
LM358N |
NS |
Low Power Dual Operational Amplifiers |
±1.5〜16 |
− |
− |
1 |
|
10 |
AD706A |
AD |
Dual Picoampere Input Current Bipolar Op Amp |
±2〜18 |
0.15 |
0.8 |
|
|
11 |
CXA4559 |
SONY |
Dual High Performance Operational Amplifier |
±2.5〜18 |
2 |
− |
− |
|
12 |
NJM4565DD |
JRC |
2 回路入り汎用オペアンプ |
±4〜18 |
4 |
10 |
− |
|
13 |
NJM5532DD |
JRC |
2 回路入り低雑音オペアンプ |
±3〜22 |
8 |
10 |
− |
|
14 |
LF412A |
NS |
低オフセット低ドリフトJFET 入力デュアルオペアンプ |
±5〜20 |
15 |
4 |
− |
|
15 |
NJM072D |
JRC |
2 回路入り J-FET 入力オペアンプ |
±4〜18 |
20 |
− |
5 |
|
16 |
NJM082BD |
JRC |
2 回路入り J-FET 入力オペアンプ |
±4〜18 |
13 |
− |
3 |
|
17 |
NJM062D |
JRC |
J-FET 入力低消費電力オペアンプ |
±2〜18 |
3.5 |
− |
1 |
|
18 |
NJM8068G |
JRC |
2回路入り ローノイズ バイポーラ入力 オーディオオペアンプ |
±4〜18 |
6.8 |
19 |
7.5 |
|
19 |
NJM4556AD |
JRC |
2 回路入り高出力電流オペアンプ |
±2〜18 |
3 |
8 |
|
|
20 |
NJM2068DD |
JRC |
LOW-NOISE DUAL OPERATIONAL AMPLIFIER |
±4〜18 |
6 |
5.5 |
27 |
|
21 |
NJM2043DD |
JRC |
LOW-NOISE DUAL PRE-AMPLIFIER |
±4〜18 |
6 |
− |
14 |
|
22 |
LM358N |
ST |
Low power dual operational amplifier |
3〜30 |
0.6 |
1.1 |
1.1 |
|
【 調査したオペアンプ 】
3.調査内容
3.1 調査項目
Case1 LM358異メーカ品の各種設定波形観測
周波数1kHz設定、振幅ほぼ20Vpp設定時において、LM358のオリジナルブランドであるNSマーク品とキット付属のTiマーク品の波形を観測しました。 これは、同一型式でもメーカによって特性が異なりますので、その相違を確認するためです。
Case2 LM358異メーカ品の周波数変更時波形観測
周波数を2kHzから65.5kHzまで変更した際のLM358のオリジナルブランドであるNSマーク品とキット付属のTiマーク品の1kHz,を比較しました。 これも、同一型式でもメーカによって特性が異なりますので、その相違を確認するためです。
Case3 ピン互換オペアンプの波形観測
ピン互換で±12V電源に対応する各種オペアンプに差し替えて、最高周波数に近い65.5kHz、最大振幅に近いほぼ20Vpp設定時の各オペアンプの正弦波設定、方形波設定時の波形を観測しました。 本キットに適したオペアンプを探すために調査しました。
オペアンプ交換に際してLCDを取り外すことが必要となります。 調査を効率よく伊粉宇ためにLCD延長ケーブルを製作して調査を行いました。
この結果より、TL082CP、およびその互換品であるNJM082BDが交換用オペアンプとして適していると判断しました。
【 LCD延長ケーブルを取付けたキット 】
Case4 LM358 v.s. TL082CPの各種設定波形観測
Case1と同様に周波数1kHz設定、振幅ほぼ20Vpp設定時におけるキット付属のLM358BPと、推奨の交換用オペアンプTL082CPの波形を観測しました。
Case5 LM358 v.s. TL082CPの周波数変更時波形観測
Case2と同様に2kHzから65.5kHzまで変更した際のキット付属のLM358BPと、推奨の交換用オペアンプTL082CPの波形を観測しました。
3.2 測定部位
各測定においてキット回路のDAコンバータ出力波形(ピンク色)、offset波形(青色)、出力波形(黄色)を観測しました。
DAコンバータ出力波形(ピンク色) |
: |
出力信号の信号源となるDAコンバータ自体の波形を確認しました。 R−2Rラダーの単純な構成となってるため、波形の切れはよくないようです。各測定における信号源が共通であることの確認に用いています。 |
offset波形(青色) |
: |
offset出力波形を確認しました。 小信号とは言えませんが、Gain1の約5.5Vppの波形を観測しています。
垂直軸は1V/divです。 |
出力波形(黄色) |
: |
offset信号を増幅して、低い周波数で最大出力に近い約20Vpp出力になるようにGain調整をした後のDDS−OUTコネクタの波形を確認しました。
垂直軸は5V/divです。 |
【 波形観測部位 】
以下の波形キャプチャ画像はWeb表示上は画像中の文字を読み取ることができません。 画像をクリックすると文字を判読できる程度の画像をダウンロードできます。
また、3.3〜3.7の波形はオシロスコープ用プローブの影響を受けています。 詳細は「4.プロ−ブの影響」を参照願います。
3.3 Case1 LM358異メーカ品の各種設定波形観測 調査結果
No. |
波形 |
周波数 |
LM358BP(Ti) |
LM358P(NS) |
A1 |
正 |
1.0 |
||
A2 |
方 |
1.0 |
||
A3 |
三 |
1.0 |
||
A4 |
鋸 |
1.0 |
||
A5 |
逆 |
1.0 |
||
A6 |
疑 |
− |
||
A7 |
疑 |
− |
3.4 Case2 LM358異メーカ品の周波数変更時波形観測
No. |
波形 |
周波数 |
LM358BP(Ti) |
LM358P(NS) |
B1 |
正 |
1.0 |
||
B2 |
正 |
2.0 |
||
B3 |
正 |
5.0 |
||
B4 |
正 |
10.0 |
||
B5 |
正 |
20.0 |
||
B6 |
正 |
50.0 |
||
B7 |
正 |
65.5 |
3.5 Case3 ピン互換オペアンプの波形観測
No. |
型式 |
メーカ |
正弦波 65.5kHz |
方形波 65.5kHz |
C1 |
LM358BP |
Ti |
||
C2 |
NJM4580DD |
JRC |
||
C3 |
TL082CP |
Ti |
||
C4 |
NJM2114D |
JRC |
||
C5 |
HA17458PS |
HITACHI |
||
C6 |
TLE2062CP |
Ti |
||
C7 |
OPA2277P |
BB |
||
C8 |
NJM4560DD |
JRC |
||
C9 |
LM358N |
NS |
||
C10 |
AD706A |
AD |
||
C11 |
CXA4559 |
SONY |
||
C12 |
NJM4565DD |
JRC |
||
C13 |
NJM5532DD |
JRC |
||
C14 |
LF412A |
NS |
||
C15 |
NJM072D |
JRC |
||
C16 |
NJM082BD |
JRC |
||
C17 |
NJM062D |
JRC |
||
C18 |
NJM8068G |
JRC |
||
C19 |
NJM4556AD |
JRC |
||
C20 |
NJM2068DD |
JRC |
||
C21 |
NJM2043DD |
JRC |
||
C22 |
LM358N |
ST |
出力をOFFにしたときの波形を下記に掲載します。 No.C21のNJM2043DDは発振しているようです。 また、No.C18のNJM8068G、No.C20のNJM2068DDも発振している可能性がありそうです。
.C21のNJM2043DDのOFF時波形 |
C22のLM358NのOFF時波形 (期待される波形) |
オペアンプ出力が発振しています。 |
オペアンプ出力は安定して一定値となっています。 |
スルーレートが大きくなくても、利得帯域幅積GBやユニティゲイン周波数が高いオペアンプは使い方が難しいです。 安易な利用は避けるべきです。 その点、TL082CPやNJM082BDなどはスルーレートが大きい割には利得帯域幅積GBやユニティゲイン周波数が低いため、簡単に発振することはなく扱い易いオペアンプだといえます。
3.6 Case4 LM358 v.s. TL082CPの各種設定波形観測
No. |
波形 |
周波数 |
LM358BP(Ti) |
TL082CP(Ti) |
D1 |
正 |
1.0 |
||
D2 |
方 |
1.0 |
||
D3 |
三 |
1.0 |
||
D4 |
鋸 |
1.0 |
||
D5 |
逆 |
1.0 |
||
D6 |
疑 |
1.0 |
||
D7 |
疑 |
1.0 |
3.7 Case5 LM358 v.s. TL082CPの周波数変更時波形観測
No. |
波形 |
周波数 |
LM358BP(Ti) |
TL082CP(Ti) |
E1 |
正 |
1.0 |
||
E2 |
正 |
2.0 |
||
E4 |
正 |
5.0 |
||
E4 |
正 |
10.0 |
||
E5 |
正 |
20.0 |
||
E6 |
正 |
50.0 |
||
E7 |
正 |
65.5 |
上記の測定を終了した後にデジタルオシロスコープ DS1054Z用プローブPVP2150を取り外してTL080CP実装時のDDS−OUT信号のみの確認をしました。 しかし、上記波形を再現できませんでした。 原因を調べたところ、DAコンバータ波形(ピンク色) はプローブPVP2150の影響を受けいていることが判明しました。 なお、信号源力インピーダンスの低いoffset波形(青色)と出力波形(黄色)はプローブPVP2150の影響は認められませんでした。 初歩の初歩を事前に確認できていないことを反省です。
プローブPVP2150の仕様と実測を下記に掲載します。 仕様はメーカWebページ「Rigol PVP2150 Standard / Passive Oscilloscope Probes」からの引用です。
レンジ |
仕様 |
インピーダンス測定 (Cp,Rp 10kHz) |
X1 |
35MHz 1MΩ±1% 50±20pF 150Vrms
|
|
X10 |
150MHz 10MΩ±1% 10±10pF 300Vrms |
|
プローブの影響を観測した結果を下記に掲載します。
プローブ |
DDS−OUT信号 約20Vpp調整 |
DDS−OUT信号 約4Vpp調整 |
X10 |
||
X1 |
||
取外し |
以上の結果より、DDS−OUT信号改善のためにオペアンプを交換(今回はTL082CP)する場合は、DAコンバータ出力ラインにプローブPVP2150に相当するキャパシタ68pF(Cp)を追加することにしました。 Rpに相当する1MΩは、回路図R3の100kΩがありますので追加不要です。
【 追加キャパシタ(回路図) 】
【 追加キャパシタ(実装状態) 】
追加キャパシタ実装後の波形観測結果を下記に掲載します。 68pF接続時はDAコンバータ波形(ピンク色) 、offset波形(青色)のプローブを取り外していますので、これらの波形はグランドレベルから変化していません。
DAコンバータ |
DDS−OUT信号 約20Vpp調整 |
DDS−OUT信号 約4Vpp調整 |
プローブ のみ接続 |
||
68pF のみ接続 |
End of This Page.