Memorandumの小部屋
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「電源線からの声だよ!」の巻
1.背景
ある機器(A装置とします)を屋外に設置していますが、その機器へは屋内から12Vdc電源を供給しています。 供給する電線は30mの長さのシールド線を使用しています。 しばらく使用していると屋外に設置しているA装置付近の音声を聞きたくなりました。 音声取得にワイヤレスマイクを使う方法もありますが、今回は有線で音声を取得することにしました。
しかし、30mもの距離の電線をもう1本敷設するのはとても大変なので、A装置の電源線を用いて音声信号を伝送することにしました。 電源線に音声信号でPWM変調をかけた信号を乗せて伝送する 方法をぼんやりと思い浮かべて計画の実行に移ります。
2. 「電源線からの声だよ!」の製作
2.1 基本回路検討
PWMを使用する時点でタイマーICである555を使用するつもりでした。 このタイマIC555は電気電子工作(というよりアマチュア無線)の世界に関わり始めた頃にCQ 誌で紹介された記事を読んで以来、いつの時代にもお世話になっているICです。 当時はデータシートの存在すら知らず、ICの理解は雑誌の記事が頼りでした。 仮に データーシートの存在を知っていても、当時の片田舎の中高生ではデータシートを入手する手段すらなかったと思います。
タイマーICに関してはCQ誌1974年12月号のIC製作教室(JA1AYO 丹羽 一夫)で紹介されており、今では想像のつかない分厚いCQ誌から必要な記事のみを 切り取って参考資料として残していました。 そういえば、当時はCANタイプのパッケージが主流でした。 80年代初頭でも、アナログICはCANタイプと決めつけていました。 (部品選定でアナログICに初めてDIPタイプを選定したときに品証部門から怒られるのではと心配したものです。)
【 CQ誌1974年12月号 タイマー555を活用しよう 】
さすがに、上記資料では役不足です。 幸いにも現在では555に関してはデータシートや関連資料は沢山出回っています。 そのなかで、最近ではタイマICを特集した「タイマIC555応用回路集」がとても役立ちますので、今回もこの資料を利用しま した。
参照 トランジスタ技術 2011年1月号 特別付録 P50〜P52
【 タイマIC555応用回路集 】
2.2 「電源線からの声だよ!」 全体構成
今回製作した「電源線からの声だよ!」の全体構成を下記に掲載します。
(クリックすると原寸大の全体構成図をダウンロードできます。)
【 「電源線からの声だよ!」全体構成図 】
機器の電源ラインにおいて、屋外の機器側に送信機、室内の電源側に受信機を設けます。
音声信号はA装置側の送信器でPWM変調を行い、電源側の受信器で復調を行います。
電源と音声信号はコイルとコンデンサで重畳、分離を行います。
電源電圧は12V、通過電流は0.5Aを目安にしています。 通過電流を大きくしたい場合はインダクタの直流抵抗と通過電流による電圧降下を考慮して、インダクタの電流容量(直列抵抗)を見直して下さい。 その場合、送信機と受信機それぞれの合成インダクタンスは少なくとも0.47mH以上にして下さい。 (今回の製作では0.47×2=約1mHとしています。)
2.3 「電源線からの声だよ!」 回路
今回製作した「電源線からの声だよ!」の送信器の回路図を下記に掲載します。
(クリックすると原寸大の回路図をダウンロードできます。)
【 「電源線からの声だよ!」送信器 回路図 】
IC3、IC2の12、13、14番ピンのオペアンプの回路は参考資料「トランジスタ技術 2011年1月号 特別付録 タイマIC555応用回路集 P50〜P52」を流用させて頂きました。
L1,L2は機器の消費電流に応じた電流容量のインダクタタが必要です。 インダクタンス値は1mH程度を目標にしました。 今回のい消費電流は0.5A程度ですので秋月電子通商のインダクター(470μH0.9A)LHL13NB471Kを2個直列接続することにしました。
音声入力回路は2系統用意しました。 IC2の8、9、10番ピンのオペアンプが音声ミキサーの機能を有しています。 用途に応じて変更すればよいでしょう。
(a) VR1系統はコンデンサマイクエレメントを接続するようにしています。 このためのバイアス用(電源用)抵抗を追加し、増幅率が高めに設定しています。
(b) VR2系統はライン入力用です。 今回はここに「高感度マイクアンプキット (K-05757)」を接続します。
IC2の1、2、3番ピンのオペアンプはバイアス電位用です。 今回の用途では、わざわざオペアンプを使用する必要はありません。 気持ちの問題でオペアンプを設けているだけです。
D1,D2は、送信器脱着時のL1,L2起因によるサージ電圧防止用に設けています。
次に「電源線からの声だよ!」の受信器の回路図を下記に掲載します。
(クリックすると原寸大の回路図をダウンロードできます。)
【 「電源線からの声だよ!」受信器 回路図 】
IC33のインバータは、波形整形のために設けています。 この回路がないと、聞けた音になりません。 当初はオペアンプを用いた回路にしていましたが、音質改善ができなかったために今回の回路を試したところ改善でき
ました。 よって、途中で回路変更を行ったためパッケージの小さい1回路入りインバータTC7S04Fを使用しました。 基板に実装できるならば普通の74HC04でもよいでしょう。 比較は
していませんが、論理反転/非反転のどちらでも構いません。
復調した音声は低音が強調された復調音声信号となります。 この対応として低音域の増幅率を下げるためにIC32の5、6、7番ピンのオペアンプ回路を設けました。 単純なCRのハイパスフィルタ入力のアンプにしています。 当初はアクティブフィルタにしていましたが、思ったような感じにな
りませんでした。 結果として、今回の回路の方が良かっために、このような回路にしました。
音声出力信号は、事情があって4回路出力としています。 NJU7044Dは余裕をもってこのようなことができます。
IC61の増幅回路は今回の紹介内容とは関係ありません。 別用途の音声信号増幅をしたかったために、おまけで設けただけです。 製作時の写真にこの部分が写っているので回路図に含めました。(このページは自作のメモ書きのために設けていますので、ご容赦を。)
D31,D32は、送信器脱着時のL31,L32起因によるサージ電圧防止用に設けています。
3. 「電源線からの声だよ!」 製作例
上記回路をベースに製作した実例を以下に示します。
「電源線からの声だよ!」送信器
【 基板部品面外観 (部品面) 】
実装計画のミスでR6をハンダ面に実装せざるを得なくなりました。
【 基板部品面外観 (ハンダ面) 】
【 基板部品面外観 (斜視外観1) 】
【 基板部品面外観 (斜視外観2) 】
【 マイク、電源入力DCジャック接続状態 】
【 ケース実装状態1 】
【 ケース実装状態2 】
「電源線からの声だよ!」受信器
【 基板部品面外観 (部品面) 】
【 基板部品面外観 (ハンダ面) 】
【 基板部品面外観 (斜視外観1) 】
【 基板部品面外観 (斜視外観2) 】
【 マイク、電源入力DCジャック接続状態 】
【 ケース実装状態1 】
【 ケース実装状態2 】
4 その他
(1) 「電源線からの声だよ!」の音声サンプルを下記に掲載します。 この音声サンプルは送信器の近くにラジカセを設置して周囲の音を集音したものです。 サンプル音声の途中に車の音が録音されています。
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