Memorandumの小部屋
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映像信号一本釣りの製作
1.背景
アナログ放送が終了してデジタル放送に全面移行すると、今までの膨大なコンポジット信号関係を扱う装置、関連機器、ケーブル類はだんだん使えなくなる、使う機会が減っていく事になるのでしょうね。 LD(これは所有していませんが)、カセットテープ、VHSテープ、5インチFD、3.5インチFDと同じ運命をっていくのは間違いないでしょう。 このような時代の流れのなかで、前から一度製作しておきかたかった特定の領域の映像信号を抽出する回路の一部の機能にトライしてみることにしました。 つまり、映像信号の一部を一本釣りして抽出する機能の装置です。 この装置で抽出した映像信号を検波して簡単な警報装置でもできないかと思っていました。 これらの機能は、現在では映像信号をPCに取り込んでソフトで処理すればもっと複雑な事を簡単にできますが、そのようなスキルは当方にはありません。 やはり、長年、慣れ親しんでいるNTSC信号をハードウエアで処理するのが一番です。
2. 映像信号一本釣りの設計
2.1 仕様概要
当初の目標は画面の一部の四角い領域の映像信号を抽出する事でした。 そのためには、画像の水平方向、垂直方向それぞれの特定領域を抽出する信号をつくる必要があります。 水平方向は水平同期信号をトリガにして特定の領域を抽出する回路は比較的容易に設計・製作できます。 しかし、垂直方向は水平同期信号の本数をカウントして抽出したい領域を数値判定しないといけませんし、一番の問題はインタレース(飛び越し走査)です。 よって、今回はやってみて構想が正しいかどうかを確認するために、垂直方向の特定の走査線(特定の水平ライン)を抽出できる機能だけの「映像信号一本釣り」の製作をする事にしました。
今回の製作の基本的な考え方は「コピーガードキャンセラ」のカウンタ部分を変更するだけで済みます。 ただし、今回の製作ではNTSC信号の映像信号部分だけを加工し、同期信号部分、カラーバースト部分は入力信号をそのまま使用することにしました。
2.2 回路図
上記仕様を基にして検討した回路図を下記に掲載します。
(上記をクリックすると原寸大の回路図をダウンロードできます。)
【 回路図 】
同期信号抽出は定番のLM1881,映像信号の入れ替えはNJM2264Dを使用しました。 これは「コピーガードキャンセラ」と同じです。
抽出したい水平ライン(垂直方向領域)であるかどうかを示す信号はPICマイコンを用いて判定する事にしました。 LM1881のデータシートに記載のアプリケーション例のようにハードロジックで製作するととても回路規模が大きいにも関わらず、検出領域設定がとても面倒で機能的に貧弱です。 よって、今回はPICマイコンのEEPROMで抽出したい水平ラインを1ライン毎に選択できるようにします。 また、入力の映像信号と同期をとるために、映像信号の差し替えの開始と終了はIC5のロジック回路でハード的に信号を作る事ようにしています。
えっ? ハードだけでやると言いながらPICマイコン(PIC12F683)でソフトを使っているではないかと言われそうですが、マイコンを使ったロジック機能ICと考えて頂きたいと思います。 このマイコンは単純に同期信号をカウントして映像信号切替要否判定をしているだけで、専用ロジック回路と見なして構いません。
VR1は、映像信号を抽出していないときの画面背景の白黒のレベル設定を行います。 (背景は白黒以外できません。)
VR2は、映像信号の切替え開始タイミング調整を行います。 終了のタイミングは水平同期信号で終了判定しています。
VR1,VR2は多回転可変抵抗器を使用するようにします。
「映像信号一本釣り」回路の電源は5V回路としています。 ACアダプタの自由度を広げるために5Vの定電圧IC回路を設けています。 また、今回は逆電圧防止用ダイオードを設けています。
微妙なところはハードウエア回路で処理していますのでPICマイコンのセラミック振動子の周波数安定度は悪くて問題ありません。 ただし、できる限り周波数を高くておく必要があります。
C13とC16はフィルムコンデンサを使用するのがよいでしょう。 セラミックコンデンサの使用は避けます。
PICマイコン(PIC12F683)のEEPROMで設定できる内容は下記のようになっています。 (PICマイコンのプログラムは非公開とします。)
アドレス | 項 目 | 例 |
$00 |
第1フレーム水平ライン選択データ16バイトの先頭アドレス。 (最大$E0)) |
$10 : $10〜$2Fにデータ格納 |
$01 |
第2フレーム水平ライン選択データ16バイトの先頭アドレス。 (最大$E0) |
$30 : $30〜$4Fにデータ格納 |
$00で指定されたアドレス |
第1フレーム水平ラインナンバー22以降の映像信号選択データ。 bit = 0 : 映像非選択 (VR1設定の輝度) |
$10 bit0 : ラインナンバー22 |
$01で指定されたアドレス |
第2フレーム水平ラインナンバー22以降の映像信号選択データ。 bit = 0 : 映像非選択 (VR1設定の輝度) |
$30 bit0 : ラインナンバー22 |
3 製作例
3.1 基板製作例
上記回路図をもとに製作した基板を下記に掲載します。
リード線カスを使って部品面電線取り出し部を作っています。
【 完成基板外観(部品面) 】
【 完成基板外観(ハンダ面) 】
信号、電源はブッシュを介して電線、ケーブルで取り出しています。
【 ケース入り完成外観 】
【 ケース入り完成外観2 】
【 ケース入り完成外観3 】
3.2 動作例
(1) 実施に動作させたときの波形を下記に掲載します。 上側の切替え信号はIC5の6番ピンの波形です。 VR1,VR2を調整することで下記波形の調整をできます。
【 波形一例 】
(2) 当初はLM1881の5番ピン(BURST/BACK PORCH)でカラーバースト部を判定できると思っていましたが、下記タイミングのように映像信号先頭部でもLow信号となっていましたので、この信号を使用することは諦めてCRによる遅延回路にしました。
【 波形検討例 】
(3) 「映像信号一本釣り」回路で映像信号を抽出した例を下記に掲載します。
新大阪駅でレールスターを撮影した写真をTVで映したときの映像です。
【 オリジナル映像 】
水平1本だけの映像はこのようになりました。
【 「映像信号一本釣り」抽出例 】
応用例として第1フレームは全て選択、第2フレームは全て非選択とした場合です。 つまり、垂直分解能が半分で、毎秒30回明滅している状態です。 |
【 「映像信号一本釣り」抽出例2 】
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