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Memorandumの小部屋

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抵抗値を測定できない!!!

 

はじめに

  「HP−126使用電源トランス変換キット (K-15069)」のコンテンツ作成時に、トランスHP−126の一次巻き線の抵抗値を デジタルマルチメータMETEX社製「M−3870D」の抵抗レンジで測定しようとしたところ極性表示が−表示や+表示に変動したり、数字自体もパラパラ変化してて測定できませんでした。

 

【 M−3870D測定時表示例 】

 

 「M−3870Dの調子が悪いのかな?」と深く考えずに、別のデジタルマルチメータMETEX社製テスタ「P−16」の抵抗レンジで測定を試みました。 しかし、こちらも表示が「OL」(オーバーレンジ)、「.000」や「0.0」となり期待どおりの測定ができませんでした。

 

【 P−16測定時表示例 】

 抵抗レンジにすれば簡単にHP−126の1次巻き線の抵抗値を測定できると思い込んでいたのが大きな間違いでした。 長年、デジタルマルチメータとお付き合いしていますが、如何に物を知らない(計測原理を知らない)/知ろうとしない(取扱説明書を読まない)かを思い知らされました。

 解決策はとても簡単で、直流抵抗測定レンジを選択すれば済むだけでした。 M−3870Dの場合はΩ測定設定後に「DCΩ」スイッチを押す、「P−16」の場合はΩ測定設定後に「SEL」スイッチを1〜2回( 測定レンジ変更)押すことで直流抵抗測定が可能になりました。 今まで「H (ヘンリー)」オーダーのインダクタンスの抵抗成分を測定したことがなく、直流抵抗測定レンジが必要であることを初めて理解(経験)しました。 何年電気に関わっているのか と、とても恥ずかしい思いをしました。

 今回の現象を理解するために抵抗値測定時におけるテスターのプローブの電圧・電流を調べましたので以下に紹介します。

 


−  調査測定器 −

1.デジタルマルチメータ M−3870D

2.デジタルマルチメータ P−16

3.デジタルマルチメータ DT380B

4.高精度LCRメータ DE−5000

 

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1.デジタルマルチメータ M−3870D

 「通信機能付きディジタル式テスタのどれを選ぼうか?」で紹介した「M−3870D」です。 現在、メインで利用しています。  このデジタルマルチメータはデフォルトでは自動でレンジ切替えをします。

 HP−126の一次巻き線抵抗値測定時のプローブ電圧、電流の時間変化を測定した結果を下記に掲載します。 プローブ電流を測定するためにHP−126の一次巻き線に電流計測用の10Ω抵抗を直列接続していますので、電圧・電流波形は実際の測定とは若干異なりますが、 どのような現象が生じているかは理解できそうです。

(注意:プローブ電流は対数軸となっています。)

【 一次巻き線抵抗値測定時のプローブ電圧、電流の時間変化 】

 

 抵抗値測定のために250ms間(上記グラフ50ms〜300ms)電流を流しますが、インダクタンスの影響でプローブ電圧が急増して正常に測定できなくなっているようです。 また、250ms経過 後(上記グラフ300ms〜)にプローブ電流が減少したためマイナス側の電圧が発生しています。 このような電圧波形のために測定結果の極性がプラス/マイナスとコロコロ変化しているようです。

 この波形より、測定開始後250ms経過してもプローブ電流を継続して流せば抵抗値を測定できそうです。 その方法はとても簡単で、Ω測定設定後に「DCΩ」スイッチを押すだけです。 「DCΩ」スイッチを押した際の測定状態、および、プローブ電圧、電流の時間変化を下記に掲載します。

 

安定した測定結果を得られました。

【 「DCΩ」スイッチを押した際の測定状態 】

 

(注意:プローブ電流は対数軸となっています。)

【 「DCΩ」スイッチを押した際のプローブ電圧、電流の時間変化 】

 

 上記現象はインダクタンスの影響でプローブ電圧が変化するのが原因ですが、これは定電流源(相当)で抵抗値測定をすることに起因していると推測されました。 そこで抵抗値とプローブ電流の関係を測定しました。 その結果を下記に掲載します。

 

【 抵抗値 v.s. 測定電流 】

 

 上記結果より、抵抗値測定電流は3種類となっているようです。 また、抵抗値測定電流を切替えるしきい値にはヒステリシスを持たせているようです。 参考までに340Ω(=330Ω+10Ω)の抵抗測定時のプローブ電圧・電流の時間変化を下記に掲載します。

 

【 340Ω測定時のプローブ電圧・電流の時間変化 】

 測定開始時(上記グラフ50ms〜)は約0.04〜0.06mA流れていますが、250ms経過後(上記グラフ300ms)に0.5mAに増加しています。 この変化が1次巻き線測定時にプローブ電圧急増を招いているようです。

 M−3870Dはインダスタンスも測定できます。 今回の測定にあわせてインダクタンス測定時のプローブ電圧を観測しました。 インダクタンス測定時の測定状態、および、プローブ電圧の時間変化を下記に掲載します。 

 

【 インダクタンス40Hレンジ測定時 】

 

【 インダクタンス40Hレンジ測定時プローブ電圧の時間変化  】

 

 予想外の電圧波形でした。 上記電圧波形からはどのようにしてインダクタンスを計測しているのか理解できませんでした。

 

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2.デジタルマルチメータ P−16

 持ち運び用として利用しているデジタルマルチメータ「P−16」です。 このデジタルマルチメータはデフォルトでは自動でレンジ切替えをします。 何故かプローブ先端金属部が頑固な酸化をしており使い辛いことろがありますが、小型軽量/最大「5999」表示できるなど使いやすい点も多く、それなりに気に入っています。

 HP−126の一次巻き線抵抗値測定時のプローブ電圧、電流の時間変化を測定した結果を下記に掲載します。 M−3870Dと同様に電流を測定するためにHP−126の一次巻き線に電流計測用の10Ω抵抗を直列接続しています。

 

(注意:プローブ電流は極性を反転しています。 また、対数軸としています。)

【 一次巻き線抵抗値測定時のプローブ電圧、電流の時間変化 】

 

 抵抗値測定では赤色プローブがマイナス電圧となっていました。 上記グラフでは電流を対数表示するため電流の極性を反転(実測マイナス極性→グラフ上はプラス極性)しています。 M−3870Dと同様にインダクタンスの影響でプローブ電圧が急増/急減していました。 抵抗値測定方法として、Ω測定設定後に「SEL」スイッチを1〜2回(抵抗レンジ変更)押すことで直流抵抗測定が可能になりました。 「SEL」スイッチを押した際の測定状態、および、プローブ電圧、電流の時間変化を下記に掲載します。

 

安定した測定結果を得られました。

【 「SEL」スイッチを押した際の測定状態 】

 

(注意:プローブ電流は極性を反転しています。 また、対数軸としています。)

【 「SEL」スイッチを押した際のプローブ電圧、電流の時間変化 】

 

 次に抵抗値とプローブ電流の関係を測定しました。 その結果を下記に掲載します。 

【 抵抗値 v.s. 測定電流 】

 

 上記結果より、抵抗値測定電流は3種類となっているようです。 また、抵抗値測定電流を切替えるしきい値にはヒステリシスを持たせているようです。 参考までに340Ω(=330Ω+10Ω)の抵抗測定時のプローブ電圧・電流の時間変化を下記に掲載します。

 

【 340Ω測定時のプローブ電圧・電流の時間変化 】

 

 340Ω測定時のプローブ電圧・電流の時間変化からはプローブ電流を4通りに切替えているように見えています。  「抵抗値 v.s. 測定電流」グラフでは最大40kΩまでの測定でしたが、さらに高い抵抗値ではもっと小さい電流で測定していると推測しています。

 

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3.デジタルマルチメータ DT380B

 「日経Linuxラズパイマガジン2018年6月号企画部品セット (K-13281)」に含まれていた「デジタルマルチテスター DT−830B」です。 このテスタの抵抗レンジは手動切替えです。

 DT830Bを用いるとHP−126の一次巻き線抵抗値を問題なく測定できます。 測定時の測定状態、および、プローブ電圧、電流の時間変化を下記に掲載します。 なお、電流を測定するためにHP−126の一次巻き線に電流計測用の51Ω抵抗を直列接続しています。 今回のプローブ電流測定では電流計測用抵抗10Ωではノイズが大きかったため51Ωに変更しました。 波形測定は、負荷 (一次巻き線+51Ω)を接続した状態で電源スイッチをOFF→ON(グラフ時間軸10ms)しました。

 

【 2000Ωレンジの測定状態 】

 

【 プローブ電圧の時間変化(抵抗レンジ200Ω・2000Ω・20kΩ) 】

 

【 プローブ電圧の時間変化(抵抗レンジ200kΩ・2000kΩ) 】

 

【 プローブ電流の時間変化(抵抗レンジ200Ω・2000Ω・20kΩ) 】

 

【 プローブ電流の時間変化(抵抗レンジ200kΩ・2000kΩ) 】

 

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4.高精度LCRメータ DE−5000

 電流・電圧・抵抗を測定する一般的なデジタルマルチメータではありませんが、「高精度LCRメータDE−5000」のプローブ電圧・電流も観測してみました。

 DCRレンジにおけるHP−126の一次巻き線抵抗値測定時の測定状態、および、プローブ電圧、電流の時間変化を下記に掲載します。

 

【 DRCレンジの測定状態 】

 

【 DRCレンジのプローブ電圧時間変化 】

 

 Rsレンジ(100Hz)におけるHP−126の一次巻き線抵抗値測定時の測定状態、および、プローブ電圧、電流の時間変化を下記に掲載します。 

 

【 Rsレンジ(100Hz)の測定状態 】

 

【 Rsレンジ(100Hz)のプローブ電圧時間変化 】

 

 Ls・ESRレンジ(100Hz)におけるHP−126の一次巻き線測定時の測定状態、および、プローブ電圧、電流の時間変化を下記に掲載します。 

 

【 Ls・ESRレンジ(100Hz)の測定状態 】

 

【 Ls・ESRレンジ(100Hz)のプローブ電圧時間変化 】

 

 RsレンジとLs・ESRレンジでは同じプローブ電圧でした。 測定結果よりLsレンジESR=Rsであると推測されます。

 

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