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Memorandumの小部屋

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静電容量比率計「高低(たかひく)なんぼ」

1.背景

  最近のディジタルテスタでは静電容量を測定できますが、10,000μFなどの大容量の電解コンデンサの静電容量は測定範囲外となっています。 また、大容量積層セラミックコンデンサは DCバイアス電圧の大きさで静電容量が 変化しますので、この電圧依存性を確認する事ができません。 今回、これらの測定ができる静電容量に関する測定器、静電容量比率計「高低(たかひく)なんぼ」を製作してみましたのでみましたので紹介します。

2,静電容量比率計「高低(たかひく)なんぼ」の仕様

2.1 基本的な考え方

 静電容量を計測する方法はいくつかあります。 デジタル容量計キット 電子CメーターキットはタイマーIC555のCR発振回路を利用して発振周波数から静電容量を測定しています。 このように発振周波数から静電容量を求める方法が主流です。

 しかし、この方法ではDCバイアス依存性を定量的に把握することは簡単にはできません。 また、静電容量が大きくなると発振周波数も低くなり、周波数での測定は非常に困難になります。 よって、今回はDC電圧の放電特性を利用して、電圧の高い状態と、電圧の低い状態での、電圧低下時間から静電容量を求める方法にしました。

【 電解コンデンサ放電特性 】

 上図が電解コンデンサの放電特性です。 今回は印加電圧の95%→85%に変化する時間(以下、High側時間と称します。)と15%→5%に変化する時間(以下、Low側時間と称します。)の2通りを同時に測定して、電源電圧の90%と10%での静電容量を同時測定することにしました。 なお、上図の桃色波形がHigh側時間、緑色がLow側時間となります。 この時間は、理想的なコンデンサであれば、静電容量に比例しますので、この時間を測定するだけで静電容量に変換する事ができます。
 この波形を作ったときの試作回路のブレッドボードの様子を下図に示します。 今回は2枚連結での試作となりました。 なお、カウント部分は8桁万能周波数カウンタキットを利用しました。

 

【 試作回路 】

 

 静電容量の数値化の方法としては、上記波形のHigh側時間とLow側時間の信号をゲート信号として、ゲート信号がHighレベルの期間にパルス数をカウントして数値化する方法としました。 同じ静電容量でもHigh側時間とLow側時間とで時間間隔が変わりますので、それぞれに独立した発振器を設けることにしました。

 基板化するに際し、正確な静電容量を測定できるのであろうか、もしくは、その必要があるのかなと初心に戻って改めて考えてみました。 そもそも、大容量コンデンサの静電容量を正確に測定する用途はほとんどありません。 どちらかといえば、容量抜けしているかどうか寿命判定に使用する用途が主だと思います。 また、DCバイアス電圧依存性を判断するのも数%の精度を必要とするものではありません。 つまり、どの程度の容量であれば良いのか分かればよいと割り切ればとても楽に設計できます。

 このように割り来る事で、コンデンサ印加電圧の95%、85%、15%、5%の検出をする機能に対して抵抗分割を正確にする必要はありません。 ほぼ、この程度の割合であればよいということで、一般的な精度(±5%)で温度特性も気にしないで済ます事にしました。 また、肝心の校正は、基準となるコンデンサを別の測定器で測定し、その数値になるように発振器の発振周波数を調整する事にしました。 よって、基準となるコンデンサの静電容量はせいぜい1000μF程度ですので、これを越える静電容量は外挿で推測する事になります。 これより、今回の測定器は静電容量計ではなく、静電容量比率計としています。  また、High側とLow側を同時に計測しますので、「高低(たかひく)なんぼ」と名付けさせて頂きました。

 

2.2 「高低(たかひく)なんぼ」 仕様概要

  今回の主たる測定目的として、静電容量DCバイアス電圧依存性がありますので測定用電圧を可変できるようにしないといけません。 また、大容量静電コンデンサの充電電流は短時間ですが非常に大きくなります。 これらの背景により「高低(たかひく)なんぼ」用電源とは別にコンデンサ測定用電源を別途準備し、これを接続できるようにしました。 また、測定は、コンデンサの放電能力を測定すべきであり、放電時の電圧で容量測定することにします。

 測定分解能は1μFを基本とし、1μFが1パルスとして24ビットのカウンタでカウントして静電容量測定をする事にしました。 よって、最大16,777,215μF(約16.7F)となります。 今回の製作で結果ではありますが、High側時間の発振回路は約73kHzであり、計測時間は最大約230秒となります。 通常、このように大きな容量はありませんので、現実的には電気二重層コンデンサで1Fとするとの周波数を約14秒となります。 ただし、これはHigh側時間だけの話であり、全体の測定時間はこの約32倍程度となり、全体で446秒(約7.5分)かかります。 しかし、ほっておいてもよいので、1回だけの測定ならば我慢する事にします。 なお、時間短縮のためにHigh側時間だけで測定中断できるようにアボート機能も設ける事にしました。 

 大容量積層セラミックコンデンサの測定は100μ前後の静電容量の場合が多々あると思います。 よって、測定分解能1μFでは荒いので、放電用抵抗を切り替えて0.1μとする事ができるようにしました。 放電抵抗は分解能1μF時に100Ω、分解能1μF時に1kΩとしました。 なお、1kΩは多回転可変抵抗器で微調整できるようにし、また、ジャンパーピンの短絡を解除して、追加でさらい抵抗を追加して分解能を上げる事ができるようもします。
 ただし、あまり分解能を上げても、それなりの再現性がでないくなる、また、今回の大容量静電容量の目的とは異なるの方向の機能であるので、分解能向上には力を入れる事はしません。

 

2.3 静電容量の定義について

 コンデンサの放電特性は指数関数で近似されます。 下図に、3種類かのコンデンサの放電特性測定実測結果と近似式を示します。 理想的なコンデンサは指数の係数が1になります。 電解コンデンサはほぼ1に近く、今回の測定原理に則っている事になりますので、本測定器で測定してもよい事になります。

 しかし、積層チップコンデンサは0.6〜0.7程度と1から外れています。 これは静電容量に電圧依存性がある事を示しています。 よって、時定数一定ではありませんので、本測定器の測定原理をそのまま適用してはいけない事を意味しています。 通常は微小交流信号に所定のDCバイアスを印加して、微小交流信号の周波数を変化させたときの振幅の変化から静電容量を算出します。 しかし、交流信号の振幅を精度良く測定するのは結構面倒ですので、このような測定は諦めて今回の測定原理をそのまま流用することにします。 電圧の変化量を小さくする事で、近似的に今回の測定原理を利用しても、それなりに静電容量として測定できると思い込む事にします。

 

電解100u : ニチコン VX(M) 85℃ 100μF 16V
セラミックリード水色100u : 絶縁型ラジアルリードタイプ積層セラミックコンデンサー 100μF  6.3V
                   RD20F107Z0JH5L Supertech Electronic Co., Ltd.
Chip GMR31 100u : チップ積層セラミックコンデンサ 100μF 6.3V
                  GRM31CF10J107ZE01L 村田製作所 

【 コンデンサ放電特性 】

 

3.静電容量比率計「高低(たかひく)なんぼ」の設計、製作

 静電容量比率計「高低(たかひく)なんぼ」の回路図を下図に示します。 回路のコメントは下記回路図に記載しておりますので、そちらを参照して下さい。

上図をクリックすると原寸大の回路図をダウンロードできます。

【 電源アダプタ「いろいろボルト」の回路図 】

 

 なお、PICマイコンはパルスカウントの機能だけです。 よって、PICマイコンの部分が担っているパルスカウント、リレーRY91オンオフ制御をご自分なりに製作する事も可能です。 PICマイコンに入力されているCK−LW、CK−HI信号のパルスをカウントする機能とリレーRY91オンオフする信号をご用意下さい。 充電時などにもパルスが発生しますので、測定開始前に手動でカウンタをリセットする必要があります。  測定シーケンスは下記のようになります。

 (1) 最初にリレーRY91の接点をオン(クローズ)して十分に被測定コンデンサを充電します。

 (2) CK−LW信号用カウンタ、CK−HI信号用カウンタを両方ともゼロリセットします。

 (3) 測定開始前にリレーRY91の接点をオフ(オープン)して被測定コンデンサを放電開始します。

 (4) 測定開始後、LED41が点灯→消灯し、しばらくしてLED42が点灯→消灯したときが測定終了となります。

 今回製作した静電容量比率計「高低(たかひく)なんぼ」の製作例を下記に示します。 

【 基板部品面(LCD取付時) 】

 

【 基板部品面(LCD取付外し時) 】

 

【 基板ハンダ面 】

 

【 「高低(たかひく)なんぼ」起動画面 】

 

 当方で作成したPICマイコンのソフト概要は下記のようになっています。

  1. 電源投入時の初期設定、及び、起動画面表示。

  2. 測定開始スイッチ待ち表示。

  3. スイッチ押している期間、コンデンサ充電表示。

  4. スイッチから指を離した直後に2秒間追加充電。

  5. もし、充電電圧不足ならば、充電リトライ表示して、所定電圧になるまで延々と待ち続ける。
    (電圧到達、もしくは、アボート待ち。)

  6. 測定準備完了表示。 (現状0.2s設定で、表示確認ほとんどできない。)

  7. High側測定。

  8. Low側測定。

  9. 測定結果表示。 (測定開始待ちに戻る。)

 

4.静電容量比率計「高低(たかひく)なんぼ」の測定例

4.1 測定結果例

 以下にコンデンサ放電特性測定に使用したコンデンサの測定結果を示します。 「H:」がHigh側時間での静電容量、「L:」がとLow側時間での静電容量です。

 


M−3870Dでの測定103.8μFを基準として調整しました。

【 基準にした100μF電解コンデンサ 】

 

【 セラミックリード水色100u 】

 

【 チップ積層セラミックコンデンサ 100μF 6.3V  】

 

 大容量コンデンサとして手持ちの0.56Fの電気二重層コンデンサを測定してみました。 精度が別にして、0.668Fとなっており、機能的には動作しているようです。 なお、H:側が1uFとなっているのは電気二重層コンデンサの特性(内部抵抗が高い)によるものですので、High側での測定は、そもそもできません。

【 電気二重層コンデンサ測定例 】

 上記の測定結果は一例です。 今後、機会を見て、いろいろなコンデンサを測定した結果を公開できればと思っています・

 上記以外の静電容量の測定を行った事例を「「高低(たかひく)なんぼ」 電解くん、測っちゃえ!」に掲載していますのでご参照願います。

 

4.2 マイコンプログラムによる表示切替え例

  今回、測定に使用したマイコンプログラムはカウンタ表示以外に、桁区切り、小数点表示、ゼロサプレス、単位切替機能も持っています。 1500μFのコンデンサを0.1μFの分解能で測定し、表示単位をわざと「nF」に設定して表示した例を下図に示します。 桁区切り、小数点表示、単位切替機能はそう変更するものではありませんので、ジャンパピンでの手動設定としています。 

押しボタン右側のジャンパ設定を変えています。 この設定は測定開始時に毎回確認します。

【 桁区切り、小数点表示、単位切替機能 】


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