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Q&Aの小部屋

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皆様から頂いたご質問の回答の一部を紹介させて頂いております。

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ご 質 問   


タクトスイッチ1個と汎用部品を使って1.5Vから5Vくらいの電源のオンオフをしたい。

 

回   答   


本ページ参考文献  電子回路 押山 保常・相川 孝作・辻井 重男 コロナ社 1957,1965 

1 ご質問への回答

  今回のご質問を頂き、今回のご質問には一般的な双安定マルチバイブレータでの回答は直ぐに思いつきます。 突飛なことは残念ながら思い付きませんでした。 しかし、トランジスタ式の双安定マルチバイブレータ(フリップフロップ)を最近手がけていないと思い、改めて復習させて頂くことにしました。

 ご質問では電源オンオフとなっていますが、電源オンオフ回路は負荷や電源電圧によって回路が異なりますので、今回はオンオフ用信号までとし、最も一般的なオープンコレクタ出力とさせて頂きます。

 なお、動作確認用として今回は負荷としてLEDと抵抗を設けております。

 

2 検討項目

 ご質問を頂いて「双安定」「マルチバイブレータ」などで検索してみましたが、良い参考例を見つけることができませんでした。 このため、回答用に一から勉強し直し(復習)させて頂くことにしました。

 最近はトランジスタ式の双安定マルチバイブレータを手がけた記憶がありません。 無安定マルチバイブレータならば電子工作のキットで実施例が沢山ありますが、双安定マルチバイブレータは機能の一部に埋もれてしまい、なかなか表に出てこない日陰の存在になりつつあります。

 今回の回答に際して、改めて学生時代の教科書を出してみました。 当方、残念ならが電子工学科出身ではないため、電子回路の教科書はこの1冊だけです。 でも、この本、基礎的な部分が丁寧に記載されていますので、今でも重宝しております。

 当時はICなんて貴重品でしたから教科書はすべてディスクリート部品となっています。 ただ、そんなに歳ではないので教科書の回路図は真空管ではないし、+接地の回路でもありません。 今では当たり前と思われている−接地の回路図のある教科書ですので、まだまだ現役でいけます。

真面目に勉強した記憶はないのですが、手垢具合や表紙状態を見ると、当時は真面目にやっていたみたいです。(勉強以外で、蔵書の表紙をここまで破損することは通常ありません。)

【 テキスト表紙 】

BBを使うところは、やはり教科書ですね。

【 基本回路 】

 

やっと回路図らしい記述がありました。

【 トリガ注入方法 】

 この教科書の(b)対象トリガの回路通りに製作すればよいのでしょうが、VBBのマイナス電源なんてとんでもありません。 単一電源で回路を動かしてこそ実用回路です。  今回は当然の如くVccの単一電源でトライします。

 早速、VBBマイナス電源に接続している抵抗が無い回路でトライしてみました。 回路上は上手にトリガがかかるように工夫されていますので簡単に動くと思っていましたが、電源投入後に1回だけ反転して、その後は反転動作してくれません。

 やはり、真面目に回路動作原理を理解しておかないと実用回路にならないようです。 原因はコンデンサの直列接続とスイッチの問題でしたた。 基本的には両方のコンデンサが同じ電圧になる前提となっていますが、 スイッチをオンからオフしたときに一方に高めの電圧が蓄積され、もう一方のコンデンサにはほとんど電荷が蓄積されていませんでした。(後で考えれば当然でした。)

 当初は製作の問題と勘違いして、つまらない時間を費やしてしまいました。 分圧用に高抵抗値の抵抗を並列に接続することで一発で解決です。 また、電源電圧も、1.5Vでも動作しましたので低電圧用に特に工夫したところはありません。  最終的な回路図を記載します。

【 双安定マルチバイブレータ 】

  1.  電源オンオフ用途ということでパワーオンリセット回路を設けました。(D3,C3,R9)
     波線で示すようにQ2(もしくはQ1どちらか一方)のコレクタに接続して下さい。 接続した側のトランジスタが電源投入時にオンします。(上記回路図ではQ2がオンします。)
     

  2.  双安定マルチバイブレータの出力回路としてQ3,Q4の回路を設けています。 ダミー負荷として抵抗とLEDを接続してますが、実際の回路ではQ3,Q4のコレクタを電源オンオフ用の信号としてご利用下さい。
     

  3.  1.5Vの動作試験をするために乾電池を使用していましたが、電源電圧調整ができません。 この回路は大して電流が流れませんので簡易的にOPアンプを使って1.5V電源を作ってみました。 回路図を下記に記載します。 簡単な試験用ですので、え いやーで、動けばよい、多少の電源電圧変動は無視です。
     

  4.  抵抗で2.2kΩを多用しておりますが、これはコの字にフォーミングされた2.2kΩが沢山あるので利用したものです。 真面目に設計すれば、抵抗の定数は変わってくると思います。

【 簡易定電圧電源(1.5V用) 】

    

  これらの試験を行ったブレッドボードの状態を示します。 今回の回路試験でもブレッドボードを大変重宝させて頂きました。

撮影用にきれいに整理しましたが、試験中は。。。。。

【 動作確認中 】

 

  •  左側のトランジスタとDIP 8PINは簡易定電圧電源回路部分で、ブレッドボードの一番手前側のラインがVccとなります。
     

  •  トランジスタは左からQ20 、 Q3 、 Q1 、 Q2 、 Q4 となります。
     


 せっかく教科書を出してきたのですから、最後に少し勉強っぽく終わりましょう。

 今回の双安定マルチバイブレータ回路でトランジスタを反転させるためのトリガ回路がR3,R7,C1,C2,D1,D2の回路です。 また、C1,C2に等しい電圧が生じるように分圧抵抗として追加したのでR4,R8です。

 スイッチSW1を押す直前のコンデンサC1,C2の両端電圧がVc1,Vc2であったとします。 また、Q1がオン、Q2がオフしているとします。

【 トリガ回路 】

 Q1のコレクタ電圧が0.2V(対GND)、Q2のコレクタ電圧が3.4V(対GND)とし、C1,C2への充電は終了した後のVc1,Vc2の電圧は下記のようになります。

   Vc1 = Vc2 = (3.4 ー 0.2) ÷ 2 = 1.6V

 つまり、コンデンサC1,C2の両端電圧は1.6Vとなります。 また、圧Va,Vb,Vcの各点の対GND電圧は下記のようになります。

  Va = 0.2V

  Vb = Va + 1.6 = 1.8V

  Vc = Vb + 1.6 = 3.4V

 この状態でスイッチを押すとVbの点が強制的に0Vとなります。 このときのVa、Vcの各点の電圧は次のようになります。

  Va = Vb − 1.6V = −1.6V

  Vc = Vb + 1.6V = +1.6V

 つまり、Vaの電圧が−1.6Vと瞬間的にマイナス電圧となります。 そうするとトランジスタQ1のベース電圧がダイオードD1を介してマイナス側に引っ張られることになります。 つまり、これはトランジスタQ1はオン状態からオフ状態になることを示します。 このメカニズムでトランジスタQ1とQ2のオンオフ状態が反転することになります。 そうです、わざわざマイナスVbbがなくても、それなりにマイナス電圧を発生させることができています。

 実際の電圧波形(Vcc=5V)を下記に記載します。 1.3ms付近でスイッチが押され、その途端にVaがマイナスに変化しています。 スイッチが押された直後はVcc〜R1〜Q1コレクタ〜R3〜C1〜SW1〜GND、Vcc〜R4〜Q2コレクタ〜R7〜C2〜SW1〜GNDの経由で各コンデンサが充電されます。

 このケースではスイッチが押された直後にQ1がオフ、Q2がオンしていますので、下記のような波形の変化となります。

【 Va、Vc電圧波形(Vcc=5V) 】

 この回路で、ご要望仕様のVcc=1.5Vのときの波形も下記します。 さすがにVcc=1.5Vだと苦しくなってきています。 どうにかトランジスタが反転してくれていることを確認できました。

【 Va、Vc電圧波形(Vcc=1.5V) 】


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